ちくま新書<br> 沈黙の中世史 ――感情史から見るヨーロッパ

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ちくま新書
沈黙の中世史 ――感情史から見るヨーロッパ

  • 著者名:後藤里菜【著者】
  • 価格 ¥1,067(本体¥970)
  • 筑摩書房(2024/07発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076359

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内容説明

声と音が生活の大部分を占め、音のない言葉がごく例外的な人々の間に限定された時代があった。本書が光を当てる中世ヨーロッパ(西暦でおよそ500~1500年)とは、そういう時代である。騒々しい世界のなかで、沈黙とはいかなるかたちでありえたのか。修道院の静寂、服喪の嘆き、聖なる沈黙……。新進の中世史家による、感情史の魅力を伝える一冊。

目次

はじめに/声と音の世界/聖書の普及/聖なる言葉/中世世界のガイドブック/第一章 祈りと沈黙/1 祈り、働く/東方と西方/神の前の沈黙/言葉の力/謙遜の諸段階/祈りの日課と修道院長の目/食事と朗読/沈黙で夜を守る/語るという罪過/2 クリュニー修道院の叫び/祈りを中心にすえた生活/誓願としての叫び/叫びの儀式/3 シトー会の『修練者の鏡』/入門の手引き/人間イエスへの敬心/適切な休み方/悪魔を去らせる声/第二章 統治の声の狭間で/1 世界年代記/2 『歴史十書』/力の発動としての感情/司教の任免/預言者たち/悪魔憑き/叫びの権威/王の訴訟/王妃ブルンヒルデ/おべっか使い/キリスト教世界の感情/クロタール王の嘆き/第三章 感情と声、嘆き、そして沈黙/1 涙において沈黙を破る/2 古代地中海世界の感情/魂の統御を狂わせるもの/服喪の嘆き/強き戦士と泣く女/男の弔い、女の弔い/古代ローマ人とフィデス/3 中世の理想的感情と服喪の嘆き/騎士と服喪/権威と嘆き/嘆きとアイデンティティ/第四章 聖と俗/1 祈る人の感情と声/アンセルムス/感情のこもった祈り/心身をひらく/2 俗人の信心と声/俗人と祈りの声/聖なる声の力/俗人のめざめ/3 清貧と使徒的生活/アッシジのフランチェスコ/カタリ派とドミニコ/托鉢修道会士/トマ・ド・カンタンプレ/第五章 聖女の沈黙/1 女性に課された沈黙/パウロの言葉/女性への禁止令/2 預言者として語る/ヒルデガルト・フォン・ビンゲン/幻視体験/器に徹する/3 聖女の系譜/処女・寡婦・妻というモデル/マーキエイトのクリスティーナ/肉欲との戦い/4 ベギンは沈黙を破ったか/半聖半俗という希望/説教師とベギン/正統と異端の狭間で/マルグリット・ポレート/『無化せし(単)純なる魂たちの鏡』の裁判/『鏡』の評価/ポレートの声/第六章 沈黙から雄弁へ/1 俗人の声/ファブリオと都市社会/『弁舌で天国を勝ち得た百姓』/『オルレアンの町人女房』/2 都市のしたたかな「聖女」? /マージェリー・ケンプ/文字の人の声/マージェリーと夫の人となり/初めての危機/イエス・キリストの到来/激しい泣き叫び/神との合一/日常的に神を感じる/マージェリーのお喋りと沈黙/第七章 沈黙を破る女/1 教えること、そして愛/母の教え/年上の知恵ある女性/愛の中世/愛をうたう/霊的な愛/『薔薇物語』/薔薇物語論争とクリスティーヌ・ド・ピザン/2 言葉を書く/クリスティーヌ・ド・ピザン/二五歳で寡婦に/若い寡婦の弱さ/言葉による救い/『女の都』/〈理性〉の役割/男性の言説/3 沈黙を破る/キリスト者クリスティーヌ/神の前の人間/おわりに/読書案内/あとがき/参考文献/図版出典/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

32
声と音が生活の大部分を占め、音のない言葉が例外的なごく一部の人々の間に限定された中世ヨーロッパ。騒々しい世界のなかで沈黙の持つ意味を問う1冊。東西に分割されて比較的早い時期から異なる道を歩むことになった中世ヨーロッパ。「暗黒の時代」と言われていたその時代もキリスト教を抜きにしては語ることができない状況において、沈黙を破る声を挙げる存在として登場する王族や司教、預言者などの生き様を描きながら、そんな時代において「沈黙」がどんな意味を持っていたのかを、その様々な視点から浮き彫りにしていく興味深い1冊でしたね。2024/08/04

ぽんすけ

21
ヨーロッパ中世というとざっと千年くらいあるが、その時代を感情史という極めて稀な切り口から考察した本。そして時代的にもその歴史はキリスト教史とラップしており、宗教の影響を色濃く受けた時代だったというのはよくわかった。又当時の社会がラテン語を習得した知識人階級=支配者階級と文盲に近い被支配者階級=農民等に明確に分かれており、農民等は意思伝達を口頭によるしか術がなくその社会は現代とはくらべものにならないくらい喧噪に満ちていたとのこと。そういった社会の中で「沈黙」はどのような意味を持つか。私は沈黙=秩序と捉えたが2026/03/25

塩崎ツトム

21
中世って千年もあんねん。で、その千年の間に、宗教界が独占していた読み書きの能力が、俗世の権力者や商工人、そして女性にまで降りてきたというのがその間に起きたことで、やがて語られることは宗教的恍惚に関すること以外にも広がって来た。とすると、近世での苛烈な魔女狩りや異端尋問はそれに対するバックラッシュで、その逆流の中をわれらは今も生きているということになるのか?2025/06/30

kuukazoo

15
感情史に興味があったので読んでみたが中世キリスト教史多めでお腹いっぱいになってしまった。修道院では神に心身を集中するため沈黙が尊重されたが儀式においては嘆きや叫びが使われた。一方、王は統治者として正義を実行するため怒りの表現を必要とした。男性は感情を抑えることが良しとされる中、服喪の際などに泣き嘆くのは女性の役目だった。しかし日常において女性は沈黙を強いられた。後半、恋愛物語など文学が登場するあたりは面白かったけど。うーん。断片的印象な読後感しかないのは、掴み辛かったんだなと思う。選択ミス。2024/10/15

Ex libris 毒餃子

14
ミクロストリアの要素と心性史の要素を加味した歴史書。女性の感情をメインにして書かれている。参考文献リストが膨大で新書レベルではない。妙なフェミニズム傾向がないので客観的な記述が多く、面白い。2024/08/23

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