内容説明
【第165回 芥川賞受賞作!】
彼岸花を採りに砂浜にやってきた島の少女・游娜(ヨナ)は、
白いワンピース姿で倒れていた少女を見つける。
記憶を失っていた少女は、海の向こうから来たので「宇実(ウミ)」と名付けられた。
この島では、〈ニホン語〉と〈女語(じょご)〉、二つの言語が話され、
白い服装のノロたちが指導者、歴史の担い手、司祭だった。
宇実は游娜 、その幼馴染の拓慈(タツ)という少年に〈ひのもとことば〉を教え、
〈女語〉を教わって仲良くなるが、やがて進路を選ぶ時期がくる。
「成人の儀」にのぞむ3人それぞれの決意とは――。
国籍・言葉・性別などの既存の境界線を問い直す世界を描いた問題作。
解説=倉本さおり
※この電子書籍は2021年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
73
彼岸花の咲く小さな島に流れ着いた少女(宇実)と島の少女(游娜)の出会いから、伝説のような物語が始まります。南のかの島が舞台と思わせるようなおおらかで呪術的な雰囲気をまとい、ひのもとのことば、ニホン語と女語、少し皮肉にも思える3つの言葉の関わりが島の歴史を紐解いていきます。物語は過去のことではなく、どうやら未来のこと。男がなぜ島の歴史を知らされないのか、急ぎすぎる説明に、知らないというだけで男たちが平和的な存在であり得るのか疑問でしたが、宇実と游娜のたどり着いた答えが、困難でも理想であり希望だと思いました。2024/09/10
ALATA
51
海のかなたから流れ着いた少女は記憶を失っていた。そこは女性が統治する謎の島。マチリが終わり殺生の禁が解かれ、晴嵐たちの踊りが続いている。廻りが騒がしければ騒がしいほど、さびしさの波が押し寄せて息苦しくなることがある・・・プロローグから白いワンピース、真っ赤な彼岸花と色鮮やかな世界に誘われる。ニライカナイの楽園、ノロと呼ばれス歴史の語り部。幻想的な語り口で視るもの聴く者の心をとらえて離さない、不思議な感覚でした★4※著者は台湾の方で自由に日本語を操るという。李さんの語る「島」、独自の世界観がにじみ出ている。2024/10/23
だい
22
李琴峰さんの第165回芥川賞受賞作品で独特な世界観で物語が進みます。 彼岸花の咲き乱れる島の砂浜に流れ着き記憶を失った少女(宇実)は島の少女と少年と出会います。少女は島の儀式を経て島で使われる二つの言語と島の深い歴史を知り、読者もこの不思議な世界観の意味を悟ります。 そしてエンディングの清々しさに、命の重さと歴史の奥深さに、人間の罪深さについて考えさせられます。2025/02/08
どりーむとら 本を読むことでよりよく生きたい
18
場面を想像しやすかった。時々英語が出ていたのもほっくりした。彼岸花は沖縄では咲かないと思うのだけれど、それは島の悲しい歴史を考えると舞台の演出としては仕方ないかな、そこは考えないようにしよう。私が心に残った言葉は、二つある。一つは、大ノロの「歴史を知る者は将来を考えなければならない」という言葉である。そしてもう一つは「万が一のことを考えても仕方がない、今生きている人のことを考えて生きていくことが大切である」という言葉である。大ノロの言葉を胸に置きながら、もう一つの言葉を考えていくことが大切だと感じた。2024/08/20
あんこ
16
第165回芥川賞受賞作。気になっていた小説の文庫版だったので購入しましたが、読めてよかった。面白かったです。最初は会話に挟まれる言語の意味が捉えがたく、ゆっくり読むことしかできなかったけど、中盤以降は貪るようにして読んだ。私は「日本の𓏸𓏸出身」というアイデンティティを持っているけど、それが失われた時どうするだろうと考えたら怖くなり、その気持ちが増長するほどに「島」の歴史を知りたくなった。 もう少し読んでいたいと名残惜しく感じながらの読了。2024/08/01
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