内容説明
「朝目を覚ますと、自分が虫けらに変わっていた」――これって、もしかして私のこと?
主人公が「虫」になる小説の何がそんなにすごいのか? 2012年のテキスト刊行時は「自分を知るための鏡」として『変身』を紹介した著者だが、ポストコロナの現状を踏まえ、この作品は「個の孤立」だけでなく「家族の孤立」として読むことも可能だと説く。そこで書き下ろしの「ブックス特別章」では、ヤングケアラー、ビジネスケアラーの問題とからめた読み解きを試みる。カフカが遺したノートに「自分にあるのは人間的弱さだけ。だが、それは見方によっては巨大な力となる」という言葉がある。カフカ没後から100年、不安と孤独を抱える人が多い今、個の弱さを知ることで人と人とのつながりの大切さを考える「介護小説」として読み直す。
【内容】
はじめに――カフカを読むことは自分を知ること
第1章 しがらみから逃れたい
第2章 前に進む勇気が出ない
第3章 居場所がなくなるとき
第4章 弱さが教えてくれること
ブックス特別章 ポスト・コロナの『変身』再読
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コニコ@共楽
13
川島隆氏がカフカの手紙を研究していたことは100分de名著でも語られましたが、カフカの人となりがここでも存分に描かれています。「なぜ虫になったか」を問うよりも「なぜカフカがこの物語を書いたか」に焦点をあてた解説書です。注目は、第2章「前に進め勇気が出ない」と第3章「居場所がなくなるとき」。実際にカフカは何度も結婚を躊躇い、”当たり前の生活”に進むことができないでいたようです。また、家族の中での関係性も徐々に希薄になる時代を生き、文学会でもリアリズムの行き詰まりの時代でもあったという視点が面白い処でした。 2024/11/21
抹茶モナカ
8
いつだったか、100分de名著の再放送でカフカを放送していて、テキストが欲しくて、問い合わせの電話とかをしたので、こうして復刊されると嬉しい。いろいろ考えてしまうけど、ザムザは僕であり、僕の母親であり、なんかなぁ。2024/10/21
takakomama
6
以前に「100分de名著」のテレビを見て、「名著の話 僕とカフカのひきこもり」と著者の新訳の「変身」を読みました。カフカが生きていた時代の社会背景を知って、理解が深まりました。不条理、孤独、絶望、ヤングケアラー、人の尊厳、自分の居場所や人間関係など、いろいろな読み方ができるそうです。朝起きたら虫に変身してることは無くても、自分や家族の病気や事故、災害などで昨日までの生活が一変してしまうことはあり得ますね。2024/11/10
らむだ
4
2012年5月の「NHK100分de名著」において放送された「カフカ 変身」のテキストを底本として加筆・修正し、新たに「ポスト・コロナの『変身』再読」、読書案内などを収録。2024/09/01
ichigomonogatari
3
2012/5に放送された100分de名著「カフカ変身」のテキストを加筆修正したもの。カフカは没後100年。不安や孤独、不条理の文学などと言われるカフカ本人は新し物好きで意外に活動的な人だったようだが、宗教に救いを求めることができず絶望を感じていた。カフカの人となり、家族、時代の背景を鑑みながら『変身』を読み解く。ケアの本、ヤングケアラーの本としても読めるという。確かに!2024/07/15
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