内容説明
なぜ原爆は広島に落ちたのか。軍港宇品の50年を描く圧巻ノンフィクション。『教誨師』著者渾身の傑作。第48回大佛次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
75
旧日本陸軍の船舶司令部のあった広島市の宇品地区に焦点をあて、その歴史を辿る一冊。太平洋戦争開戦間近かな時期に、船舶不足について意見具申をし罷免された司令官がいたなど知らなかったし、そもそも恥ずかしながら宇品という地名すら聞き覚えがなかった。島国日本から海外へ派兵するには輸送船舶が絶対必要なのに、その事に気づきもしていなかった。広島を原爆投下の目標とした大きな一因に宇品基地の存在があったのに実際被害を受けたのは市街地だったこと。無傷だった船舶司令部が原爆投下2時間後から隊をあげて救援救護に向かったこと。2024/07/31
さぜん
55
「人類初の原子爆弾は、なぜヒロシマに投下されなくてはならなかったのか」この疑問から出発し、日本軍最大の輸送基地宇品から日本の戦争の歴史を掘り下げたノンフィクション。島国日本において船舶輸送は重要な機能であるのに参謀本部は軽視していた。その中で奮闘した司令官達の足跡から見えてくるものに、現代の日本の課題が重なる。何とかなるという浅はかな考えと計画の下で突き進んだ戦争。失われた命の数と引き換えに何を得たというのか。膨大な資料を読み込み、丹念な取材を経て書かれた本作。何度も涙しこの本と出会えた事にただただ感謝。2024/08/13
piro
40
広島の宇品港に置かれた陸軍船舶司令部に関するノンフィクション。大戦を日本の兵站と言う観点から克明に描いた力作。戦争自体が愚かな事ですが、日清日露戦争では重視されていた兵站戦略が軽視され、多くの犠牲に繋がった愚かしさが腹立たしい。海軍ではなく陸軍が海上輸送を受持つと言う構図が結局は民間頼みに繋がり、命を落とした多くの人が非軍人であったと言う事実は初めて知りました。「船舶の神」と呼ばれた田尻昌次中将や、被爆後の広島で復旧に尽力した佐伯文郎中将の様な「良心」はせめてもの救いですが、遣り切れない想いが残ります。2024/08/16
もっぱら有隣堂と啓文堂
10
傑作ノンフィクションだぞこれは。兵站と補給、いわゆるロジスティックスを軽視し根拠ない精神論で戦線を拡大した挙句、外航船はおろか内航船も無くなり国力を喪失し敗戦した本邦。政策実行にあたり根拠が必要という現在にも通ずる教訓が示される。陸軍船舶司令部というニッチな分野に目を付け、ジャーナリストらしく取材対象を時間をかけて丁寧に掘り下げていく態度はまさにプロフェッショナル。その結果、未発表の田尻中将の自叙伝や佐伯中将の遺品にたどり着き説得力が増した。二人の歴史研究家の的確な助言も作品の完成度アップに一役買っている2024/07/22
辻井凌|つじー
5
広島の宇品にあった陸軍船舶司令部の歩みを追い、日本軍という組織、戦争とその悲劇性、広島への原爆投下を書き切った。登場するどのエピソードも興味深い。我々が過去の戦争を知るときに輸送と民間協力のことをいかに忘れてきたかを突きつける。おすすめ。 https://www4.targma.jp/tetsumaga/2024/08/12/post34367/2024/07/16
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