講談社学術文庫<br> ベルクソン哲学の遺言

個数:1
紙書籍版価格
¥1,375
  • 電子書籍
  • Reader

講談社学術文庫
ベルクソン哲学の遺言

  • 著者名:前田英樹【著】
  • 価格 ¥1,375(本体¥1,250)
  • 講談社(2024/07発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065362273

ファイル: /

内容説明

フランスの哲学者アンリ・ベルクソン(1859-1941年)は、1937年2月8日に記した遺言状で「私は、公衆に読んでもらいたいものすべてを刊行したと宣言する」と断言し、生前に刊行した7冊の著書以外の死後出版を厳に禁じた。
ベルクソンが自身の著書として指定したのは、4冊の主著『意識の直接与件に関する試論』(1889年)、『物質と記憶』(1896年)、『創造的進化』(1907年)、『道徳と宗教の二源泉』(1932年)、2冊の論文集『精神のエネルギー』(1919年)と『思想と動くもの』(1934年)、そして『笑い』(1900年)である。現実には死後、遺稿集や書簡集のほか講義録まで出版された。それらが研究上、重要な資料をなすことは言うまでもない。だが、その一方で哲学者の遺志が無残なまでに裏切られたことも否定しようのない事実である。
本書は、どこまでも遺言状に忠実であろうとする。ベルクソンが自身の著書として指定した著作だけを愚直に、真摯に読んでいくこと。その当たり前の営みによってのみ浮かび上がるものがあることを、本書の読者は知ることができる。すでに定評を得た本書に新たな書き下ろしを加えた「完全版」を、ここに満を持してお届けする。

[本書の内容]
第I章 遺言状
1 生涯を貫くシンフォニー/2 単純なひとつの行為/3 自伝的遺書/4 哲学に欠けている「正確さ」
第II章 ほんとうの障碍物に出会う
1 「持続」は障碍物だということ/2 「持続」を語る困難/3 持続という問題への入口/4 予見不能であるとは
第III章 砂糖が溶ける時間
1 映画フィルムは回転する/2 砂糖水ができるまで/3 誤った回顧から解放されること
第IV章 直観が〈正確〉であること
1 思考を誂える/2 「直観」という努力/3 直観の対象/4 「直観」を定義する困難
第V章 〈記憶〉についての考え方
1 持続において思考する例/2 「記憶」と「過去」との関係/3 それ自体で在る過去/4 脳と記憶
第VI章 〈器官〉についての考え方
1 哲学はいかに〈努力する〉のか/2 持続において思考する例/3 器官としての「眼」/4 進化の原因としての持続
第VII章 持続が目指すところ
1 飛躍の結果としての人類/2 直観と本能/3 潜在的本能による仮構機能/4 持続において思考する例
第VIII章 哲学の目的
1 神秘主義と機械主義/2 〈停止〉を〈運動〉それ自体に送り返すこと/3 持続において思考する例/4 手仕事の効用、感覚の教え/5 〈深さ〉において思考する喜び
補 章 哲学の未来のために
1 科学の半身たるべき哲学/2 「共感」という事実/3 この地上に生きている哲学

目次

第I章 遺言状
1 生涯を貫くシンフォニー/2 単純なひとつの行為/3 自伝的遺書/4 哲学に欠けている「正確さ」
第II章 ほんとうの障碍物に出会う
1 「持続」は障碍物だということ/2 「持続」を語る困難/3 持続という問題への入口/4 予見不能であるとは
第III章 砂糖が溶ける時間
1 映画フィルムは回転する/2 砂糖水ができるまで/3 誤った回顧から解放されること
第IV章 直観が〈正確〉であること
1 思考を誂える/2 「直観」という努力/3 直観の対象/4 「直観」を定義する困難
第V章 〈記憶〉についての考え方
1 持続において思考する例(その一:「記憶内容」)/2 「記憶」と「過去」との関係/3 それ自体で在る過去――潜在性/4 脳と記憶
第VI章 〈器官〉についての考え方
1 哲学はいかに〈努力する〉のか/2 持続において思考する例(その二:「器官」の存在)/3 器官としての「眼」/4 進化の原因としての持続
第VII章 持続が目指すところ
1 飛躍の結果としての人類/2 直観と本能/3 潜在的本能による仮構機能/4 持続において思考する例(その三:動的宗教)
第VIII章 哲学の目的
1 神秘主義と機械主義/2 〈停止〉を〈運動〉それ自体に送り返すこと/3 持続において思考する例(その四:言葉)/4 手仕事の効用、感覚の教え/5 〈深さ〉において思考する喜び
補 章 哲学の未来のために
1 科学の半身たるべき哲学/2 「共感」という事実/3 この地上に生きている哲学
あとがき
学術文庫版あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かとうさん

4
「(スペンサーの進化哲学を受けて)私は、進化の哲学全体で主役を演じるはずの実在の時間が、いかに数学を逃れるものであるかを見て、ほんとうに愕然とした。」とベルクソン本人が述べた時間を“持続”としてとらえ直して、意識や記憶、進化に及ぶ哲学を打ち立てたが、反科学的と当時から批判されていたらしい。そんなベルクソンを前田さんが、熱量ある書きっぷりで読み手が迷わないように先導する感じで、面白い読書だった。ベルクソンの神秘主義解釈もまた大変独特で、完全にSFなんだが「幼年期の終わり」を思い出した。好きな本。 2025/06/14

おほり

1
ベルクソンは自らが刊行した哲学書以外の日記や書簡類の死後の公刊を遺言で固く禁じた。つまり、既刊書によってのみ、彼の哲学は哲学できると言うことだ。哲学は文書ではなく、行為であるという認識が深くあるように思えた。 このような観点から、もう一度、彼の著作に立ち返って、哲学をする本である。誠実で愛に溢れている。決して簡単な内容でないし、ある種の生きる構えのようなものが読むには必要とされる。しかし、得られるもの、体験できるものは大きい。2025/08/12

縞目

0
メロディのたとえを踏まえるなら、歌うことは、物質となった言葉に生命を与え返してやることなんだな〜。それを言葉でやるのは無理な話で、ベルクソンが、書けるだけのものを書いたほかは執筆を重視しなかったのは納得。生涯書き続ける哲学者とはなんなのか。重要なのは、著作とはべつのところで自分の生がひとつの歌になっていることだった? あらゆる営みが、歌が歌詞に生命を与えるように、自分のなかの物質性に息を吹き込んで生き返らせるようであること。自分が生きていると思い出し続ける、さわやかな充実。歌と歌詞は生命と物質に相当。2025/07/03

縞目

0
メロディとしての生、哲学。小林秀雄はベルクソンの「直観」を、吉田健一は「持続」をとったんだなと思った。2025/04/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/22012544
  • ご注意事項

最近チェックした商品