内容説明
横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは――。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。(解説・千街晶之)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
447
他の本と並行して読み進めていた一冊。妾腹の子の下剋上ストーリーを期待していたけれど、これだけ長くても尺が足りずに、ほぼ学生時代までで終わってしまっているのが残念。ここから一族の当主にまで成り上がって、さらに凋落していくところが見たかった。それをやろうと思うと、山崎豊子作品のように、何巻かにわけて出さないと無理だろう。大半がかな子が10代の頃なので、何となく切れ者っぽいことを頭の中で考えているだけで、特別目立った行動を起こせていない。結末をミステリとして終わらせたのはむしろやらない方がよかったのではと思う。2025/02/17
stobe1904
174
【このミス第3位】舞台は明治から大正末期の横浜。妾の子供として育ったかな子は母の死後、父親の檜垣澤家に引き取られるが…。大正時代の雰囲気が色濃いなか、富裕な一族の隆盛を描く重厚な大河小説といった建付けがメインで、ミステリ色を期待すると肩透かしとなると思う。最終盤の関東大震災後の描写が圧倒的なリアル感を持って迫ってくる。少し長いと感じたが、小説の面白さがぎっしり詰まった作品だった。★★★★☆2025/11/03
KAZOO
168
最強のミステリー書店員が選ぶ「大人の推理小説大賞」に選ばれたということのようです。確かにそのような賞に値するものであると思いました。800ページ弱の文庫本ですが一気に読んでしまいました。最初は、谷崎純一郎の「細雪」を思わせる気がしましたが、やはりミステリーという気がしました。明治末期から関東大震災の直後までの時代で舞台は横浜の金と権力を持った女系一族の話です。その妾の娘と生まれた女の眼で一族を観察しつつ自分の存在感を大きくしていくものである意味成長小説ともいえると思いました。楽しめました。続きを期待します2025/04/22
yukaring
162
妾腹の娘かな子から見た富豪一族・檜垣澤家の繁栄と崩壊を描く重厚なミステリ。大正という激動の時代、妾の子と謗られながらも子供とは思えぬ智力で立ち回るかな子と女帝として君臨するスエを中心に癖の強い女性たちの織り成す謀略や嫉妬、ヒリヒリとした腹の探り合いからもう目が離せない。わずか7歳で母親と死に別れ父の屋敷に引き取られたかな子。女系一族の当主スエ、跡継ぎの花、美しく気まぐれな三姉妹たちと起こるべくして起こる不穏な事件や不審死。秘密や陰謀が渦巻く館で己の権利のため策略を巡らす力強いかな子の姿に心を掴まれる1冊。2024/11/17
のぶ
162
800ページに迫る長編ながら飽くことなく読み通す事ができた。コピーには『細雪』×『華麗なる一族』×ミステリとあるが、ミステリーの要素は薄く女系一族の大河小説という感じだった。主人公の高木かな子は明治37年生まれ。横濱では知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家の当主である要吉の妾の子だったが、母が亡くなったことを機に、かな子は7歳で檜垣澤家に引き取られ、大奥様スエ、婿養子を迎え三人の娘のいる奥様の花らと一緒に暮らす事になる。いろんな事が起きるが、かな子の賢くてしたたかな生き方が印象に残った。充実した読書体験だった。2024/10/14




