内容説明
「お前さんは真先に私の肥料(こやし)になったんだねえ」――『刺青』で鮮烈な文壇デビューを果たし、『痴人の愛』『卍』『細雪』と名作を多く遺した谷崎潤一郎。性の不一致を理由に妻を友人に譲渡、義妹といかがわしい交際をする等、私生活は世間の大顰蹙を買う一方、飽くなき妄執を巧みな筆致と見事な日本語で描き出した作品は耽美の極みと絶賛される。公私共に異常に乱れた巨匠の文学世界を徹底解説。(解説・たつみ都志)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
88
阿刀田さんの久しぶりの文庫新刊です。谷崎純一郎作品についての評価を示してくれています。谷崎は好き嫌いがあり、私もそうなのですが、「細雪」や「陰翳礼賛」(この本にはありませんが)は何度も読んでいます。しかしながら、そのほかの「刺青」「蓼食う虫」「鍵」「瘋癲老人日記」などは読もうという気も起きません。阿刀田さんは比較的きちんと評価されているようですが。2024/08/01
Nobu A
10
阿刀田高著書初読。8月発刊の新刊ホヤホヤ。読書会の次回課題本が谷崎潤一郎作品の為、予習をしたく手に取った本評論本。谷崎作品は何一つ読んだことがなく、お陰で作家のことが随分と理解出来た。ただ、作品未読なだけに、内容に共感だったり異論だったりといった認知反応が起きず、実質朧げながら輪郭が浮かび上がった程度。明治末期から昭和中期までの怒涛の日本を生きてきた。そして今より遥かに限られた人しか執筆出来なかった時代の文豪。心して読み解かなければならないと感じる。当時に思いを馳せながら。でもね、これが難しいんだよな。2024/11/20
SAT(M)
4
谷崎作品のダイジェストに解説のついた、国語の便覧のような本です。取り上げられている作品の半分くらいは読んでいたかな。強烈な視覚的なインパクトを残すシーン(師匠のために目を突くとか、生首を洗っている女とか、火事の中を少女をおぶって逃げる盲人とか)のために、他の部分があまり記憶にない作品もちらほらと‥。ただ、そういったある意味地味なシーンで緻密な描画を積み重ねることで、谷崎の描く一見非現実的で奇矯な欲望に説得力と立体感を与え、それを下品なものどころか美麗なものとして読者に見せることに成功しているんだろうな。2024/11/19
Shinya Fukuda
1
谷崎作品を読む前にこれを読むか、或いは読んでから読むか?特に迷うこともないと思う。読んだことがなくてもあらすじが示されるので十分面白い。読んでから読む場合は阿刀田さんがどの部分を読みどころと考えているのか、またどの谷崎作品を高く評価しているのか知ることができてこれも面白い。やはり、痴人の愛、春琴抄は高評価されている。また、細雪は関西時代を代表する作品なのだなと思った。吉野葛は出ていなかったが個人的には結構好きだ。2025/03/01
aoi
1
細雪を読みたくなった。2025/01/23