内容説明
パリに暮らすインテリアデザイナーのポールは、離婚歴のある39歳。美しいがもう若くないことを自覚している。恋人のロジェを愛しているけれど、移り気な彼との関係に孤独を感じていた。そして出会った美貌の青年、シモン。ポールの悲しげな雰囲気に一目惚れした彼は、14歳年上の彼女に一途な愛を捧げるが――。二人の男の間で揺れる大人の女の感情を繊細に描く、洒脱で哀切な恋愛小説の名品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
116
サガンの第4作目の中編。39歳の女性独身店舗デザイナーである主人公のポールが浮気者のパートナーのロジェとは別に、彼女の賛美者である14歳下の美青年シモンと知り合い、次第に心が惹かれてゆくが…、という物語。「ブラームス」は演奏会でのダシに使われるだけの小道具だが、作者もブラームス自身には興味がないらしく、どんなコンチェルトだったのか(ピアノ?ヴァイオリン?チェロ?)説明がなく「ブラーミン」(ブラキチ)の私としては「きちんと書いてもらいたい」とクレームを付けたいところであった。⇒2024/09/12
NAO
61
「若い」ではなく「若くみえる」と言われるようになった39歳の女性ポールを中心にした三角関係。ドロドロした感じがしないのは、そこに孤独と倦怠の影が見えるからだろうか。ポールが結局ロジェのところに戻るのは、やはり、彼との関係が自分にとって一番居心地が良かったからだろう。実は、彼女は孤独は嫌いといいながらもそれほど嫌いではなく、倦怠感に浸っている自分が好きなのかもしれない。ラストのロジェはなんともはやで、ポールのちょっと孤独だけど幸せな時間はいつまで続くのだろう。新訳での再読。表紙は、断然こっちの方がいい。2024/09/06
ころこ
45
テンポが早く、直接心情が描かれる説明的なところ、作者の実生活のルサンチマン全開なところと欠点はある。だが、単なる流行作家の小説ではない。女性が若さを失いつつ、不用意な人生の選択に後悔もしつつも、女性を守る古い社会通念と、自立した女性の責任を背負わされた狭間で、それでも肯定して生きていく。女性の場合、表向き上手くいっている人でも、失敗や後悔がありがちだというのはポールとロジェの非対称さで想像がつく。意外と社会的なテーマで、離婚や未婚の多い日本では、自分のことが書かれていると思う女性は多いはずだ。2025/04/05
Apple
36
ポールの抱える孤独が身の回りの色々なところから覗いて,彼女の心を惑わしていく感じがある。「帰って来れば朝起きたままのベッドがあって,結局まる一日が,まったくむなしく無意味だったように思えてしまう。」などの文章がいちいち印象に残りました。シモンとポールたちの違いが明確に感じられるのですが,やはり最大の要因は若さであるかのように感じられます。「目に涙をあふれさせ,階段を駆け降りている。まるで祝福された人のように走っている。彼は二十五歳。」所詮シモンが別世界の住人であるかのような決定的なコメントと感じました。2025/03/18
さばずし2487398
36
うーん、ポール、ひどい…。こりやシモンがトラウマに陥るのではと架空ながら心配になった。タイトルが洒落てて、色んな意味が込めらているのだろうなと思わせられる。若くはない女性の悲哀とか、繰り返してしまうサガとか、後書きにも解説されていたようにドビュッシーの様な決して華やかな青春などではない感じとか、そういう表現が込められている様に思うが、それにしても。 後、この新潮文庫は表紙のイラストが素敵。2024/05/13
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