内容説明
アジア・太平洋戦争を戦った兵士たちは敗戦後,市民として社会の中に戻っていった.戦友会に集う者,黙して往時を語らない者……戦場での不条理な経験は,彼らのその後の人生をどのように規定していったのか.「民主国家」「平和国家」日本の政治文化を底辺からささえた人びとの意識のありようを「兵士たちの戦後」の中にさぐる.
目次
序 章 一つの時代の終わり
消えゆく戦友会/本書の目的
第一章 敗戦と占領
1 戦場の諸相
餓死・海没死・特攻死/戦場での 「学習」
2 敗戦と復員
陸海軍の自壊現象/陸海軍の復員の開始/復員船の船内で/復員兵への冷ややかな視線/敗戦の実感/復員兵の社会復帰/「戦後民主主義」への反発と受容/GHQの対日占領政策/旧軍からの継承/変わらない意識
第二章 講和条約の発効
1 講和条約の発効と 「逆コース」
サンフランシスコ講和条約の特質/経済復興の達成/「逆コース」のはじまり/靖国神社・護国神社の復権/軍人恩給の復活/戦犯の復権
2 旧軍人の結集
相次ぐ旧軍人団体の結成/戦後型在郷軍人会=日本郷友連盟の運動/日本郷友連盟の限界/運動の担い手/再軍備と旧軍人
3 「戦記もの」ブームと 「戦中派」の登場
高級将校による戦記/下士官の戦記/「戦記もの」への批判/「二等兵物語」ブーム/「戦中派」という世代/「戦中派」の発言を封じる力
第三章 高度成長と戦争体験の風化
1 高度経済成長下の日本社会
「戦後民主主義」の定着/「敗戦のトラウマ」の克服/社会の中堅となった 「戦中派」/「終戦記念日」の定例化と旧軍人への叙勲/金鵄勲章復権問題/戦争体験の風化/消せぬ記憶
2 戦友会・旧軍人団体の発展
基礎単位としての小規模戦友会/階級による序列化の排除/戦友会の統制的機能/戦友会の大規模化/靖国神社での慰霊祭の開催/偕行社・水交会などの組織化の進展/戦友会への参加を拒む人々
3 「戦記もの」の動向
地方新聞社の郷土部隊戦記/伊藤桂一の作品/『父の戦記』/『レイテ戦記』/戦史室の来歴/『戦史叢書』の特徴/「戦無派」世代の登場
第四章 高揚の中の対立と分化(一九七〇年代‐一九八〇年代)
1 戦友会・旧軍人団体の最盛期
日中国交回復と高度経済成長の終焉/戦友会の活動のピーク/慰霊祭の状況/三ヶ根山頂の慰霊碑群/部隊史の刊行/戦友会に対する抵抗感
2 最盛期の背景
遺棄された遺骨/政府の政策転換と戦友会/沈没艦船内の遺骨の収容/洋上慰霊祭/軍恩連の圧力団体化/軍人恩給の大幅増/軍人恩給の持つ差別性
3 変化の兆し
アジアからの批判の声/日中戦争に関する世論調査/戦争認識に関する世論調査/教科書問題の国際化をめぐる世論調査/中曽根首相の靖国公式参拝問題に関する世論調査/戦友会会誌の変化/加害行為への言及/内部論争の公然化/旧陸軍航空隊関係者内の対立/海交会の動向/海外における遺骨収集活動/贖罪意識の芽生え/旧軍人の減少と高齢化/偕行社・水交会の将来問題/靖国神社の危機
4 語り始めた元兵士たち
庶民が語り始める/戦争体験の記録化――その契機/部隊史に対する批判・部隊史の変化/加害証言の登場
第五章 終焉の時代へ
1 旧軍人団体の活動の停滞
侵略戦争認識の定着/戦友会の解散/軍恩連の衰退/日本傷痍軍人会の衰退/偕行社の後継団体問題/水交会と海上自衛隊との接合
2 侵略戦争論への反発
細川首相発言の波紋/「不戦決議」反対運動/戦争に対する多様な見解の存在/全国憲友会連合会という組織/慰安婦問題をめぐる論争/軍上層部への怒り/犬死論/無益な死の実態の解明
3 持続する変化
戦友会の会誌/ある元兵士の総括/新しいタイプの部隊史/遺族の側の変化/戦史室の変化/語り始めた元兵士たち/遺族の世代交代/『孫たちへの証言』/零戦パイロットの証言/「証言記録兵士たちの戦争」/証言の生々しさ/虚構の大義/世論調査にみる戦中派
終 章 経験を引き受けるということ
戦後史の特質/経験の持つ意味/時代の終わりを前にして
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
解 説……………大串潤児
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