岩波現代文庫<br> 兵士たちの戦後史 - 戦後日本社会を支えた人びと

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岩波現代文庫
兵士たちの戦後史 - 戦後日本社会を支えた人びと

  • 著者名:吉田裕
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  • 岩波書店(2024/06発売)
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  • ISBN:9784006004163

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内容説明

アジア・太平洋戦争を戦った兵士たちは敗戦後,市民として社会の中に戻っていった.戦友会に集う者,黙して往時を語らない者……戦場での不条理な経験は,彼らのその後の人生をどのように規定していったのか.「民主国家」「平和国家」日本の政治文化を底辺からささえた人びとの意識のありようを「兵士たちの戦後」の中にさぐる.

目次

序 章 一つの時代の終わり
消えゆく戦友会/本書の目的
第一章 敗戦と占領
1 戦場の諸相
餓死・海没死・特攻死/戦場での 「学習」
2 敗戦と復員
陸海軍の自壊現象/陸海軍の復員の開始/復員船の船内で/復員兵への冷ややかな視線/敗戦の実感/復員兵の社会復帰/「戦後民主主義」への反発と受容/GHQの対日占領政策/旧軍からの継承/変わらない意識
第二章 講和条約の発効
1 講和条約の発効と 「逆コース」
サンフランシスコ講和条約の特質/経済復興の達成/「逆コース」のはじまり/靖国神社・護国神社の復権/軍人恩給の復活/戦犯の復権
2 旧軍人の結集
相次ぐ旧軍人団体の結成/戦後型在郷軍人会=日本郷友連盟の運動/日本郷友連盟の限界/運動の担い手/再軍備と旧軍人
3 「戦記もの」ブームと 「戦中派」の登場
高級将校による戦記/下士官の戦記/「戦記もの」への批判/「二等兵物語」ブーム/「戦中派」という世代/「戦中派」の発言を封じる力
第三章 高度成長と戦争体験の風化
1 高度経済成長下の日本社会
「戦後民主主義」の定着/「敗戦のトラウマ」の克服/社会の中堅となった 「戦中派」/「終戦記念日」の定例化と旧軍人への叙勲/金鵄勲章復権問題/戦争体験の風化/消せぬ記憶
2 戦友会・旧軍人団体の発展
基礎単位としての小規模戦友会/階級による序列化の排除/戦友会の統制的機能/戦友会の大規模化/靖国神社での慰霊祭の開催/偕行社・水交会などの組織化の進展/戦友会への参加を拒む人々
3 「戦記もの」の動向
地方新聞社の郷土部隊戦記/伊藤桂一の作品/『父の戦記』/『レイテ戦記』/戦史室の来歴/『戦史叢書』の特徴/「戦無派」世代の登場
第四章 高揚の中の対立と分化(一九七〇年代‐一九八〇年代)
1 戦友会・旧軍人団体の最盛期
日中国交回復と高度経済成長の終焉/戦友会の活動のピーク/慰霊祭の状況/三ヶ根山頂の慰霊碑群/部隊史の刊行/戦友会に対する抵抗感
2 最盛期の背景
遺棄された遺骨/政府の政策転換と戦友会/沈没艦船内の遺骨の収容/洋上慰霊祭/軍恩連の圧力団体化/軍人恩給の大幅増/軍人恩給の持つ差別性
3 変化の兆し
アジアからの批判の声/日中戦争に関する世論調査/戦争認識に関する世論調査/教科書問題の国際化をめぐる世論調査/中曽根首相の靖国公式参拝問題に関する世論調査/戦友会会誌の変化/加害行為への言及/内部論争の公然化/旧陸軍航空隊関係者内の対立/海交会の動向/海外における遺骨収集活動/贖罪意識の芽生え/旧軍人の減少と高齢化/偕行社・水交会の将来問題/靖国神社の危機
4 語り始めた元兵士たち
庶民が語り始める/戦争体験の記録化――その契機/部隊史に対する批判・部隊史の変化/加害証言の登場
第五章 終焉の時代へ
1 旧軍人団体の活動の停滞
侵略戦争認識の定着/戦友会の解散/軍恩連の衰退/日本傷痍軍人会の衰退/偕行社の後継団体問題/水交会と海上自衛隊との接合
2 侵略戦争論への反発
細川首相発言の波紋/「不戦決議」反対運動/戦争に対する多様な見解の存在/全国憲友会連合会という組織/慰安婦問題をめぐる論争/軍上層部への怒り/犬死論/無益な死の実態の解明
3 持続する変化
戦友会の会誌/ある元兵士の総括/新しいタイプの部隊史/遺族の側の変化/戦史室の変化/語り始めた元兵士たち/遺族の世代交代/『孫たちへの証言』/零戦パイロットの証言/「証言記録兵士たちの戦争」/証言の生々しさ/虚構の大義/世論調査にみる戦中派
終 章 経験を引き受けるということ
戦後史の特質/経験の持つ意味/時代の終わりを前にして
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
解 説……………大串潤児
用語リスト

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ステビア

19
戦士から企業戦士に、そして反省と証言へ2022/03/16

Satoshi

15
元兵士たちの戦後について、様々な証言とアンケート結果をもとに総括していく。非常に勉強になった。20年以上前に亡くなった祖父はインパール作戦の生存者であり、毎年開催される部隊の集会を楽しみにしていた。壮絶な経験をしたはずであるが、孫にはその苦労体験を話さなかった。本書を読めばその理由は理解できる。戦争体験といえども千差万別であり、立場により異なる。戦友を貶められないという気持ちを抱きつつ加害の記憶を持ち続けている。簡単に語れるものではない。2023/05/09

nnpusnsn1945

13
戦記本の種類や、連隊史について広く考察された本である。伊藤桂一や、神立尚紀の著作も言及があったが、後者は厳しい戦線の様相が描けていると高く評価されていた。また、軍人恩給の差、教科書問題にも兵士の視点からうまく切り込めていた。他にも、戦史叢書の問題点、靖国神社について兵士たちはどう思っているか等々幅広く出来事を取り上げている。本書は戦記本の紹介もされているので、気になった物を読めば理解が深まるであろう。2020/10/04

ののまる

12
これは本当に勉強になった。やっと元兵士が加害の体験を遺言として話そうとする機運になった現代、私たちがそれをどう受け止めて、非当事者であるが当事者意識を共有できるかにかかっている。戦友会が消滅していったことで緘口令がなくなり話しやすくなったことや、高度成長期によって次世代が戦中派世代に完全に背を向けて、あんたたちの起こした戦争でしょうよ、自分たちには関係ない、と戦争責任を追求をしなかった日本社会の戦後処理による歪みなど…、いろいろ納得。2021/07/18

エリ本

9
敗戦直後の復員船内での「上官へのリンチ」「戦争精神病患者の投身自殺」、戻ってからの民間人の白い目。部隊からの勝手な逃亡も相次ぎ、軍用機で家に帰っちゃう人もいたりとか、かなり混乱があったよう。壮絶な戦争から帰ってきた人の気持ちを考えると、戦後生き抜くのは相当大変だったんだろうな。少し理解できた。2023/10/31

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