岩波新書<br> 不適切保育はなぜ起こるのか - 子どもが育つ場はいま

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岩波新書
不適切保育はなぜ起こるのか - 子どもが育つ場はいま

  • 著者名:普光院亜紀
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2024/06発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 270pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320197

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内容説明

暴力を加える,強く叱責する…….保育施設において子どもの心身に対する深刻な被害が相次ぐ.いま保育の現場はどうなっているのか.長年,保育問題に取り組んできた著者が豊富な事例をもとに問題の背景を丹念に検証.保育の「質」を置き去りにした政策を問い,子どもが主体的に育つ環境づくりへ向けて具体的に提言する.

目次

はじめに
第1章 相次ぐ不適切保育の実態
裾野市の事件が照らし出した暗がり
見えているのは氷山の一角
保護者の立場からの要望
ブラックボックスになりがちな特性
「訴え」や「通報」が葬られる背景
保育は止められないライフライン
改めて不適切保育とは何か
全国保育士会のセルフチェックリスト
報道や「親の会」への相談でよく見られる事案
◆コラム1 保育施設の種類
◆コラム2 イギリスのDBS
◆コラム3 保育所保育指針
◆コラム4 指導監査とは
第2章 不適切保育の背景にあるもの――子どもが育つ場で何が?
不適切保育の背景をみる
園の保育観・理念という背景
「しつけ」「指導」という不適切保育
保育者の資質という背景
エスカレートする強者の行為
保育の質を左右する「風通し」とは
保育体制はなぜ「苦しい」のか
保護者が子どもを守るために
カメラ導入の是非
◆コラム5 子どもの権利委員会が示した「体罰禁止」の理念
第3章 子どもを見失った少子化対策――子どもの権利の視点から検証する
一・五七ショック
女性が働き続けられる社会へ
両立支援のための保育制度改革
「利用者ニーズ」という印籠
共働き一般化へ
無頓着な「詰め込み保育」はいまも続く
都心の園庭は「ぜいたく品」か?
週六六時間を週四〇時間労働の保育士が支える
気がつけば「長時間保育大国」
働き方改革の出遅れ
保育士という職業の位置づけ
「パート保育士活用」が打ち出される
「保育の市場化」をめぐる議論
◆コラム6 保育ママ
◆コラム7 二〇一四年に起きたベビーシッター事件
◆コラム8 子育て支援員
第4章 「保育の質」は社会の未来を左右する――子どもが育つということ
保育の質への無理解が制度を歪めた
子どもは安全と栄養だけでは育たない
アタッチメント理論は政策に活かされたか
保育者の専門性や経験値が必要とされる理由
三・四歳を六対一で保育したペリー・プリスクール
コロナ禍の調査から見える保育の実像
五歳児の調査結果について
三歳児の調査結果について
家庭の養育力と保育の質の関係
非認知スキルの育ちをどう支えるか
「早生まれ問題」に関する大人の責任
「習い事保育」は本当に付加価値なのか
有料サービス化による子どもの分断
質の高い保育は質の高い子育て支援を実現する
◆コラム9 子どもの安心感――発達心理学の理論から
◆コラム10 二一世紀出生児縦断調査
◆コラム11 保育環境評価スケール
第5章 不適切保育のない社会へ――子どもの育つ場をどう支えるか
「子どもの権利」がようやく表舞台に
一人一人を大切に育む時代
動き出した保育士配置の改善
徐々に進んできた処遇改善
改善分が保育士に確かに届くために
不正・不祥事の被害者は子ども
「見える化」は実現するのか
低迷する第三者評価制度
監査・評価制度の混線
保育の質と保育政策の関係
「子どもを真ん中に」施策をブラッシュアップする必要
「女子ども」を軽んずる社会からの脱皮
不適切保育防止から質の高い保育の実現へ
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

64
裾野市の不適切保育の事例が導入部にあるが、全体としては『保育の質の向上を目指して』と題する方が適切な内容。著者は保護者の立場から保育に様々な提言をしてきた団体の代表を務めており、保育の子どもに対する影響の意味や社会的な意味も様々な研究を紹介しながらわかりやすく説明している。その上で当然の結果と言えるが、保育の質向上には保育士の質向上が重要で、そのためには保育士の待遇改善が必要とする。保育は規制緩和と自由化の中で、自治体がかかわる領域が比較的しっかり残されている。それを利用して改善することの重要性は同感だ。2024/08/08

ネギっ子gen

57
【不適切保育:暴力や暴言その他の人格を傷つける行為によって子供の心身に有害な影響を与える保育】豊富な事例をもとに、保育問題の背景を丹念に検証し「保育の質」を置き去りにした政策を問い、子どもが主体的に育つ環境づくりへ向けて具体的に提言する新書。深刻なのは、<園に抗議しても、「必要な指導です」「あなたの子どもにも問題がある」などと、自身の保育を振り返ることなく答える園がある/自治体の担当課に訴えても「保育内容のことは立ち入れない」「基準は満たしている」などの大雑把な対応を>されてしまうことがあること、と――⇒2024/08/26

けんとまん1007

52
不適切保育が起こる要因を、表面化していることから、その元を辿っていくと、真因が見えてくる。そこにあるのは、今の国の状況そのものに辿り着く。量を求める、効率を求める。しかも、短期的な視点での効率だけを求める現状。保育という面だけでなく、それ以外の社会状況全般にも当てはまる。もちろん、短い期間にそうなったわけではなく、長い時間の結果であることは言うまでもない。しかし、そこで諦めるわけにはいかないと思う。気付いたところから、地道に取り組むこと。それを継続するしかない。2024/08/04

そうたそ

13
★★★☆☆ ここ最近でも数件の不適切保育に関わるニュースを見聞きした。なぜ保育園における子どもたちへの被害は絶えないのか。その原因を探るとともに、より良い保育の環境づくりを提言する一冊。質より量を優先してしまう保育の現場だが、ではなぜ量を優先せざるを得なくなったのか、と元を辿り出すと、その根っこは深い。日本の社会の在り方というところまで話は広がってしまいそう。過酷になる一方な、保育士という仕事であるが、子どもたちのためのより良い環境づくりのためにも、何らかの改善が行われることを願うばかり。2024/07/23

でんすけ

7
センセーショナルに報道される不適切保育について、実は保育そのものの質が根本的な原因であるという。園庭などの構造設備、保育者の数、待遇。「保育の質」に関わるものは、働く親のための預け先の拡大というわかりやすい目標のために蔑ろにされてきた。その負債を背負わされるのは、保育の現場であり、最終的には子どもに行き着く。「不適切保育とは何か、どうして起こるのかを見きわめ、防止策を考える…子供という存在を理解し、子どもの人格を尊重する保育とはどのようなものかについてそれぞれが考え、共通認識をつくることがまず必要です。」2024/08/12

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