岩波新書<br> なぜ難民を受け入れるのか - 人道と国益の交差点

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岩波新書
なぜ難民を受け入れるのか - 人道と国益の交差点

  • 著者名:橋本直子
  • 価格 ¥1,232(本体¥1,120)
  • 岩波書店(2024/06発売)
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  • ISBN:9784004320180

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内容説明

世界であいつぐ迫害や人権侵害.「自国第一」を掲げるポピュリズムの台頭.状況が年ごとに複雑になるなか,国際社会は葛藤を抱えつつも難民保護の取り組みを続けている.各国はいかなる論理と方法で受け入れを行なってきたのか.日本の課題は何か.政策研究の知見と実務経験をふまえ,多角的な視点で難民「問題」を考える.

目次

はじめに
第一章 難民はどう定義されてきたか――受け入れの歴史と論理――
国民国家体制と「難民」の誕生――第二次世界大戦まで
難民条約の成立
難民条約上の難民の定義
アフリカと中南米における広い難民の定義
戦争・武力紛争と難民
難民に準ずる別の地位を作ったEU諸国
難民受け入れ制度の空白地帯アジア
領土的庇護と外交的庇護
第二次世界大戦後にできた三つの重要な国際機関
移民と難民の違い
第二章 世界はいかに難民を受け入れているか――その1「待ち受け方式」――
自力でたどり着いた庇護申請者の難民認定審査
難民の集団的受け入れ――なぜ「途上国」は寛大なのか
国家間の保険制度としての難民保護
一時的保護
補完的保護
一時的保護と補完的保護の違い――EUの場合
第三章 世界はいかに難民を受け入れているか――その2「連れて来る方式」――
第三国定住とは
第三国定住での受け入れの流れ
「連れて来る方式」と「待ち受け方式」との違い
「待ち受け方式」と交換にされる第三国定住
難民以外の立場での受け入れ
民間スポンサーシップ
本国からの直接退避
第四章 日本は難民にどう向き合ってきたか
外国にいる難民支援のための財政的援助
インドシナ難民への対応――一九七五年から二〇〇五年
難民条約に基づく個別庇護審査――一九八二年から
なぜ日本の難民認定率は低いのか
第三国定住――二〇一〇年から
留学生としての受け入れ――二〇一六年から
アフガニスタン現地職員の退避――二〇二一年から
ウクライナ(避)難民の積極的受け入れ――二〇二二年から
第五章 難民は社会にとって「問題」なのか
難民はそもそも「エリート」
1 難民と犯罪
難民の定義から除外される場合
難民の追放が許可される場合
難民条約以外の国際法における送還停止規定
難民受け入れは「治安リスク」なのか
日本における外国人犯罪
2 難民受け入れによる財政負担
庇護申請者への公的支援
第三国定住難民のみへの公的支援
定住支援プログラムにかかる公的費用
難民を含む外国人と生活保護
第六章 なぜ「特に脆弱な難民」を積極的に受け入れるのか――北欧諸国の第三国定住政策――
スウェーデン、デンマーク、フィンランドの第三国定住政策の概要
なぜわざわざ「特に脆弱な難民」を受け入れてきたのか
近年のデンマーク、スウェーデン、フィンランドにおける変革
ノルウェイの第三国定住政策
なぜノルウェイだけ「パラダイム・シフト」が起きていないのか
ノルウェイの極右政党の戦略
政治交渉と妥協
人道性と定着可能性のバランス感覚
犯罪率の減少
世論による根強い支持と広範な理解
王室ファクター
おわりに
あとがき
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

117
難民の定義、難民条約、ノン・ルフールマン原則、難民と移民の違い、日本の難民受入れの歴史など、制度・経緯・現状はよくわかった。難民には「受け入れ方式」と「連れて来る方式」があることも納得した。著者は、難民による犯罪率の増加は僅かであり、また「難民はそもそもエリートが多い」と言うが、受け入れ側が選択的に主導権を握る第三国定住に議論が偏っているようにも見える。今、欧米で右翼政党が主導する反移民・反難民の動きが加速する中で、「なぜ難民を受け入れるのか」という問いへの答えが見出せないまま読了してしまった…。2024/08/02

syaori

73
難民受け入れについての本。何度も言及されるのが、「途上国」では自国が危機に直面した場合のための保険制度、「先進国」では「人口政策、国家としての投資」としての側面など「人道と国益のバランス」ということで、その中で日本の難民受け入れは国益の方に傾きすぎているのではとも示唆されます。しかし同時に、「人道的優等生」だったものの近年厳格化が進む北欧の事例から人道に傾きすぎても問題が起きることが示され、国家は「難民にどこまで寛容になれるのか、どのようにしたら寛容であり続けられるのか」その均衡を探る難しさを感じました。2025/11/19

1.3manen

48
F文庫より。高校生は、公共や政経で学ぶ「ノン・ルフールマン原則」(33頁他)。これは、いったん難民が他国の管轄圏内に入ったら、難民でない、あるいは値しないまで迫害の危険のある国に絶対に追い返してはならない国際法上の重要大原則。初めて知ったのは、「チェーン・スポンサーシップ」で、難民が自立して、民間スポンサーになれるほどに成功、別の難民を呼び寄せるという連鎖現象(104頁)。素晴らしい。本来の難民保護とは、本国で迫害のおそれがあり、特に脆弱な立場に置かれた人を優先的に受け入れる(148頁)。寛大な対応を。2024/12/19

kan

23
日本の難民受け入れの低さは周知の通りだが、アフガニスタンの国外退避大使館職員らと、ウクライナ避難民の扱いの差に、著者は強い疑問を示す。思い込みではなく、冷静なデータを基に状況を多面的に捉える重要性を説いている。支援をコストと捉えるのではなく、将来の納税者を育てる投資と考えるのも、人間の尊厳と国益の両立に繋がり説得力がある。ただし、難民の多くはエリートとの記述は、私が接した難民を思い出すと違和感が残る。イラクの大学教授夫妻もいたが、学校に通った経験のないシリア女性も多くいた。難民像は一括りにできないと思う。2026/02/19

Satoshi

16
素晴らしい新書。ヨーロッパ各国が右傾化し、難民・移民により治安が悪化するという言動がさも常識のように語られる昨今で、各国の事例やデータをもとに客観的な事実を記している。難民の定義、欧米各国は難民を受け入れた歴史的理由、そして日本の難民政策の順に理路整然と述べている。「生まれの偶然性」という著者の問題提起は難民受け入れ率が世界的に極めて低い日本こそ考えるべきテーマではないであろうか。2024/07/02

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