内容説明
日時や方角の吉凶を熟知し、占いやまじないで人々の不安を解消した陰陽師(おんようじ)。暦の計算や天体観測にもとづき凶事の予見もできる、平安貴族にとって頼もしい存在だった。彼らが貴族に教えた方違(かたたがえ)や物忌(ものいみ)、八卦忌(はっけいみ)などの陰陽道の基礎知識をわかりやすく解説。文学作品にも注目し、国風文化が華ひらいた平安時代に陰陽道が成立・発展した事情にせまる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
123
『光る君へ』の安倍晴明は平安朝政界の黒幕の如く暗躍していたが、本書が描き出す陰陽師は貴族の心理療法を担当する精神科医のイメージか。科学や医学が皆無の時代に高位の名門公卿であっても、相次ぐ天災や疫病に途方に暮れていた。そんな彼らに占いや呪術で進むべき道を示して安心させ、パニックに陥らず政治が円滑に行われるようにしたのだ。しかし貴族たちを説得し納得させるには陰陽五行説や祭祀、暦法から医薬まで膨大な知識を要し、事情に応じて使い分けねばならなかった。その意味で陰陽師は朝廷の医師兼テクノクラートととも称せるだろう。2024/08/30
アメヲトコ
8
2024年7月刊。貴族たちの不安を解消する、今でいうコンサル的な役割を果たしていた陰陽師(おんようじ)の仕事についてまとめた一冊です。占いやまじないのシステムについてしっかり解説してくれているのですが、馴染みのない用語が頻出するため説明についていくのが相当に大変、というかついていけませんでした。情報量豊富なので事典的に使えそうですが。2024/07/03
のりたま
3
大河ドラマ「光る君へ」に安倍晴明が登場するからか、陰陽師に対する関心がまた高まっているようだ。陰陽師に関する書籍のうち、『御堂関白記』『紫式部日記』など「光る君へ」の視聴者には馴染みのある書物が登場する本書はタイムリーな出版といえる。文学作品がふんだんに引用されていること、陰陽師を利用する側(貴族)からの記述が多いことから、平安文学を学ぶ人が陰陽師に関する知識を得るのには本書がよいと思った。2024/06/23
福ノ杜きつね
1
なかなか読むのに難渋した一冊。そもそも一回読んだだけで全貌を理解しようなど烏滸がましい本ではあるのだが。陰陽道が平安貴族の生活指針となっていた、ことくらいは多くの人が知るところだが、肝心の陰陽道そのものが如何に複雑怪奇な代物であるか、読み進めるほどに実感できる。確かに、この有り様は専門家に頼らざるを得まい。極論すれば、陰陽師の存在意義はまさにその一点が大きかったのである…というのが素直な感想だ。2024/09/24
Go Extreme
1
「いんようじ」ではなく「おんようじ」 占い―未知・未来を知らせることによる不安の解消: 陰陽五行説、干支の基礎知識 占いの種類 災害・怪異の占い 六壬式・六壬占 物忌 心身の不例に関する占い その他に六壬式で占ったこと まじない―対処と予防による安心、招福: 広義の陰陽師・陰陽道の成立へ 陰陽道祭祀 どのようなときに祓を頼むか 安全・安心をもたらす呪術と危険な呪術 日時・方角禁忌と暦―時空のめぐり・安心の提供、怖れの解消: 暦 日の吉凶 八卦忌 方角の吉凶 平安時代の陰陽師・陰陽道から現代へ2024/07/31