内容説明
家宣(いえのぶ)・家継(いえつぐ)2代の将軍に仕えた新井白石は、儒学者として政治改革を進めつつ、武士としての誇りを持ち続けた。武家独自の「礼楽(れいがく)」を興(おこ)し、官位制度に代わる勲階制度を提案、将軍の対外的呼称の変更に関わる。さらに家宣の能楽愛好を諫め、貨幣復古政策を推進するなど、神君家康の徳を継ぎ、江戸幕府と徳川氏の永続実現に奮闘した生涯に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
15
副題の如く、白石が主導した正徳の治の全体像が詳らかにされはいない。6代将軍徳川家宣の側用人間部詮房を通じて間接的に政治活動をするに過ぎない小身の白石が関わる政治システムの記述も十分ではない。中程の皇女降嫁周辺で白石の姿が消える。しかし彼の儒教的信念に加え、武士としての強い一念が基となった、天命が下されたとする神君以来の幕府政権の正当性の回復、それを歪めた綱吉への暗黙の非難、同根にある良貨政策への復帰等は理解できた。シドッチ尋問等から合理的と思えた白石の、観念的原理主義的な姿が印象的だ。判り易い文章の良書。2025/08/27
MUNEKAZ
12
新井白石の思想について、「武人」という側面に焦点を当てて読み解く。武家の優越を説く公武関係の捉え方や家康を理想化する復古思想など、白石のモノの見方の要諦がまとめられている。その献策の裏にあるのは、泰平の怠惰に溺れて天命に見放され、2代続けての養子将軍という現状への危機感であり、家康の聖代に還ることで政治を正そうとした。名分論などは切れ味抜群で唸らせられるが、経済政策など実学の分野は、やはり空理空論としか思えない。また吉宗期の零落ぶりは、まさに寵臣の末路といった感じで寂しいものを感じる。2024/12/13
皆様の「暮らし」を応援サポート
11
新井白石の天皇・朝廷権威を相対化する「武人」としてのアイデンティティと歴史観を繙き、18世紀初頭の朝幕関係における緊張感を見直す名著。関ヶ原以降の徳川体制の確立を天皇家への「天命」の変革への近接(易姓革命への近接=未到達)と見る「謀叛人」(日野龍夫)的な荻生徂徠と、関ヶ原合戦自体が「天命」の変革(天皇家に代わる徳川家=武人への「天命」降下)として天皇家をすでに「徳」のための道具としか考えていない白石の差異は、まるで日本資本主義論争の徳川バージョンのようでめちゃくちゃ面白い。2025/11/09
アメヲトコ
7
2024年7月刊。德川家宣・家継政権のブレーンとして正徳の治を推進した新井白石の評伝。一般には儒学者としてのイメージが強いですが、本書では彼の自意識が学者よりも武人にあったことに着目します。とりわけ公武関係の解釈のありようは近世後期以降の理解とはまた異なっていて興味深いところ。2024/10/08
wuhujiang
2
白石の「こだわり」にフォーカスした本。武士であることにこだわり、"このままでは天命が改まり徳川家の世ではなくなる"という危機感から家康の徳を継承する政治を目指したことがわかる。本書は1人の人物を生まれから死去まで追う形式を取っていない。白石がこだわったことの解説がメイン。そのためかやや読みにくさを感じた。白石のこだわりを記載するうえで周囲の儒学者や経緯の説明も加わって来るので脱線気味なのか原因か。読み物としておもしろいとは確かに感じるのだが、肝心の白石の生涯がきっちりわかった気にはならなかった。2024/11/16




