内容説明
「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」――ある日、ヘルパーのみっちゃんからそう聞かれた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続ける“あたし”の腹が膨らみだして……。この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す! 著者デビュー作にして第45回すばる文学賞受賞作!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
となりのトウシロウ
114
一人暮らしで痴呆症のおばあさん・カケイさん。物語はカケイさんの独特のユーモラスな一人語りで語られる。自分の人生を振り返ると、それは壮絶な人生だった。家庭内暴力の父、母はカケイ産んですぐ亡くなり、継母にはイジメられ、ヤクザな兄、一人息子は自殺し、介護にうんざりの嫁・・・。でも、そんな過酷な人生も暗くなることなくしっかりと生きてきて幸せだったんだろうなぁとカケイさんの心の中の声の話ぶりから想像できます。誰にでも訪れる老いをテーマにした老人物語。2024/11/24
ぶち
106
すごいもの読んじゃいました。 自分の老後を想像すると、たくさんの不安事にかられ、暗澹たる気持ちになってしまいます。でも、この小説でとても救われました。これで、少しは安心して認知症も、介護される生活も受け止めることができそうです。そして、私に"お迎え"が来るときには、一緒に暮らしていた猫たちが総出でお迎えに来てくれたらいいなぁ、と思うのでした。私はその時、この表紙の絵のような手のひらの上の花々を見ながら、「私の人生は幸せだったと」と思いながら猫たちが来るのを待つのです。2024/08/17
rico
83
認知症の高齢女性、カケイさんの一人語りで物語は進む。周りから見れば何かと手のかかる「おばあさん」、周囲の人たちもそう接してるけど、カケイさんはカケイさん。記憶が飛んでも、状況判断ができなくても、鋭い視線で周囲を観察し、独特のユーモアを持ち、壮絶な人生を生きたことへの矜持と失ったものへの哀惜と痛みを胸に抱えて。内にあるそんな豊かなものが、一見とりとめのない言葉からこぼれだす。ヘルパーさんがみんな「みっちゃん」である理由、カバー絵の花の意味。それを知った時、声を上げそうになった。今この作品に出会えてよかった。2025/07/29
nico🐬波待ち中
81
「このまんま、あしたの朝、目が覚めなきゃいいのに」一人きりで眠りにつく夜、こんな風に思いを巡らす時が私にも来るのだろうか。カケイさんの老後の生き方から、自分の老後について考える。不安と孤独に苛まれそうになって怖くなった。カケイさんの人生は驚く程に波乱万丈。けれど、カケイさんの手を最期に彩る花々に、カケイさんの"しあわせ"だった頃の記憶に、リアカのお迎えに、とても幸せな気持ちになれた。最後の最後で自分の人生を"しあわせ"だったと認識できたカケイさんに胸がアツくなった。それにしても、広瀬のばーさんカッケー。2024/08/24
はっせー
73
認知症患者からみた世界を描いた作品。複雑に見える世界をこんなにもうまく書いた本を他にみたことがない!衝撃を受けた!本書の主人公は認知症患者のカケイさん。カケイさんが過ごした一生はまさに波乱万丈。そんな人生過ごしていたら辛いかも。でも小説のある地点で見方が変わる。その変化が本書のスパイスになっている。読めて良かった!2024/10/20
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