内容説明
「朝鮮人が暴動を起こした、井戸に毒を投げ込んだ……」。関東大震災の発生直後、各地で飛び交ったデマによって多くの朝鮮人が命を奪われた。非常時に一気に噴き上がる差別と偏見。東京で、神奈川で、千葉で、埼玉で、悲惨な事件はいかなるメカニズムで起きたか。虐殺の「埋もれた歴史」は誰によってどのように掘り起こされてきたか。100年余りが経過した現在、何が変わり、何が変わらないのか。歴史的事実を葬ろうとする者たち、人災を天災の中に閉じ込めようとする政治家、差別行為にお墨付きを与える行政……。差別やヘイトクライムの問題を長年追ってきたジャーナリストが100年余り前と現在を往還し、虐殺事件が及ぼし続ける様々な風景を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
91
関東大震災直後に起こった悲劇、虐殺を 追ったノンフィクションである。 虐殺を促した差別と偏見が充満した社会を 時代を 克明に描く。言われなく殺された人々の 真実が丹念な取材により、掘り起こされる。 一体何が起こっていたのか? それにしても 暴走する集団心理は怖い。 百年以上も前の日本で何が行われたのかを 知るにはちょうどいい貴重な作品だった。2025/05/11
佐藤(Sato19601027)
76
我々は、この事実から目を背けてはならない。そして、忘れてはいけない。1923年9月1日に関東大震災が発生した。死者・行方不明者が10万人を超える未曾有の大惨事であったが、その後に、朝鮮人に対する「放火した/暴動を起こした/井戸に毒を入れた」等の流言飛語と自警団による虐殺が起こった。著者は、慰霊碑が建っている現場を歩き、記録された文書を紐解き、震災当時(それ以前から)日本の社会に起こっていた事実、その結果、何があったのかを詳らかにする。同時に、今でも社会の一部に染みついている差別と偏見を明らかにする。良書。2024/09/01
fwhd8325
71
福田村事件に関する書籍は読んでいるし、辛いから、この分野はもういいかなと思っていましたが、かなりの熱量で紹介されていましたので、手に取りました。結論から言えば、読んで良かった。これだけの取材を敢行された力作です。そして、今も続く差別の現状。何故、差別が起きるのか、そんな背景もよくわかります。ああ、イヤだ。でも、決して目を背けてしまうことなく、真っ正面からこの問題には向かっていきたいと感じさせてくれます。2025/06/17
キク
63
関東大震災直後に「朝鮮人が井戸に毒をもり、放火を行っている」というデマが流れ、5,000人以上の朝鮮人が虐殺されたとされる。アウシュビッツや南京と同じように、「捏造だ」という声は根強く、公的資料はほぼない。分断が危機を呼ぶだけでなく、危機も分断をよび、相乗的に状況は混沌へ向かっていく。SNSが今まで言語化されなかった大きな無意識を、その声を望む人々により増幅させて届けていく。「なぜドイツはヒットラーを選挙で選んだのか」よりも深刻な選択が世界最強国で起こっている。でも絶望は安易だから、僕は絶望なんかしない。2025/03/09
鷺@みんさー
28
さすがにこのボリュームは疲れた。タイトルが示す通り、災害に乗じて差別が浮き彫りになり、時に「ごく普通の」人たちが恐ろしい程残虐な殺人者となることは、百年前の関東大震災の実例だけでなく、昨今のネトウヨ的行動を見るに充分今も警戒すべき状態だ。というのが趣旨で、その為の600ページ、時に過去の事例だけでなく、今の慰霊祭に声高にヘイトスピーチを叫ぶレイシスト達の姿も描写される。ただ、「ここでもこんな虐殺があった。証拠はこの文書に証言が…」の連続で、まとめというより羅列に近い。2025/07/07
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