内容説明
人生の折り返し地点を過ぎ、将来に漠然とした不安を抱える久志は、天文学者になった同級生・慧子の帰郷の知らせを聞く。手作りで天文台を建てるという彼女の計画に、高校3年の夏、ともに巨大タペストリーを作ったメンバーが集まった。ここにいるはずだったあと1人をのぞいて――。仲間が抱えていた切ない秘密を知ったとき、止まっていた青春が再び動き出す。
喪失の痛みとともに明日への一歩を踏み出す、あたたかな再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
392
プロローグ以外は久志と千佳が交互に語りを担当する。彼らは、仲間たちととも20数年前、高校最後の文化祭で大きなオオルリのタペストリーを作った。そんな彼らが45歳になった今、再び集まる。語りは現在を中心に進行するが、そこに20数年前の過去が時として影を落とす。そして、物語は終局に向かって徐々に加速してゆく。エンディングはなかなかに感動的だ。ちょっと重松清に似ていなくもない。あえて言えば、重松から浪花節っぽさを剥ぎ取り、代わりに天文学でソフィスティケイトさせたといった感じか。そして全編を貫流するオオルリの⇒2025/04/14
mae.dat
338
高校3年生時、学祭でのオオルリのタペストリー作りの想ひ出と、齢45を迎えて当時の皆んなと励む事になった個人用天文台作りを通じた物語でね。漫然とした毎日を過ごす大人へのエールなのかな。皆んな自他共に認めざるを得ないおじさん、おばさんだからさ、派手さは無い。ただ45歳定年説を唱える修は一味違いますが。幸福感とは脳内物質に依る電気信号に過ぎないとする久志の考えは、良い感じに枯れてるねー。そんな皆んなの今後は殆ど描かれていませんが、この経験と共に、それぞれ閉塞感等々を脱して行くんだろうなぁ。青春。2024/07/17
のり
142
高校時代に文化祭で力を合わせたメンバーが、人生半ばに差し掛かり、一人の帰郷を境に再集結する。目的は天文台を建てるという壮大な挑戦。学生時とは違う積み重ねた事情もある。誤解したままの一件もある。しかし、動き出した事により、少しずつではあるが、何かが変わりつつある。第2の青春期。同級生と会う機会が減りつつあるので羨ましいかぎりだ。2024/10/12
まさきち
122
高校時代に文化祭の為にオオルリの巨大タペストリー造りに共に挑んだ同級生6人。そんな彼等も45歳となり、1人は不慮の事故で故人となり、1人は引き篭もりとなる。残りの4人が秦野に偶然集まり、その中の1人が目論む個人天文台建設に向けて心を一にしていく。これを天文の専門知識を散りばめ、過去の思い出に根ざした青春群像劇として描くのはなく、現在彼等が抱える悩みや葛藤、更には過去の謎なども絡んで描かれており、非常に楽しめた一冊。最後にこれらが絶妙な形で溶け合い、夜の天文台で叫ぶシーンには涙せずにはいられませんでした。2025/04/04
rico
105
すぐに見えてしまった。閉塞感を抱えた複数の中年男女が、青春の日の「忘れもの」を探し当て、新しい一歩を踏み出すお話ねって感じで、最初はなかなか物語に入っていけず。でも、オオルリって、流星群って。それだけでもう鼻の奥がツンとしてくる。ええ、私天文学者に憧れてました。肉眼で天の川が見えるような田舎育ちです。だから、伊与原さんの専門知識に根差した描写、天文台の作り方とか、宇宙へのアプローチとか、ツボにはまり。彼らの想いが広がり人々を動かすラスト。都合良すぎだろて突っ込みつつも、星空を見上げたくなる。なんかずるい。2025/01/20
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