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内容説明
本書に登場するのは、時代と場所に恵まれ、才能と運に恵まれ、歴史に名を残すことになった一握りのユダヤ系芸術家たちである。有史以来、離散、追放、移住、迫害を余儀なくされてきた人々は、どのようにして美術という世界と関わり、そこに自らの生を託してきたのか――。これまで、いくつかの理由で語られることのなかった〈美術をめぐる静かな闘争〉を綴った貴重な物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫羊
18
そもそも美術史に疎く、初めて知ることばかりだった。美術史を通してユダヤ人の苦難の歴史が生々しく伝わってくる。ユダヤ教徒にとってのモーゼ第ニ戒の重さなどということは考えたこともなかった。文章も読みやすく、最後まで緊張感漲る時間を味わえた。2022/04/21
sabosashi
14
ユダヤ人は偶像を崇めてはならない。そんな理由でながい間、ユダヤ人は美術とは無関係に暮らすことを強いられた。ユダヤ人の文学への貢献と比べるとはなはだしい相違あり。 しかしながらユダヤ人のなかにも絵画に憧れるひとが出てきて、わたしたちはほとんど知らないが慣習との地道で苦しい闘いがつづいたらしい。 それでもカミーユ・ピサロを筆頭にパリやらウイーンなどでユダヤ系の画家が輩出されてくる。ではユダヤ人美術なるものは存在するのか。2023/06/13
オサム兄ぃ
11
終章で簡潔にまとめてある通り「ユダヤ人という出自を完全に隠蔽することで、『緋の十字』を描くことができたベラスケスから始め、ユダヤ系芸術家が啓蒙主義時代にドイツ語圏に現れ、パリのモンパルナスに集まり、ホロコーストを経てニューヨークの美術界で主役を演じられるようになるまでの多様なできごと」を記した本。馴染みのない主題、学究的記述、そして新書なのに1180円、350頁の分量。でも一気に読みであった。個人的今年の新書大賞にノミネートしたい。最後に明かされる著者がこのテーマに取り組む情熱の理由には、はからずも感動。2016/02/07
Francis
9
十戒により長い間絵を描くことを禁じられてきたユダヤ人。啓蒙主義が広がり、法律上は差別のなくなった近代においてユダヤ人の画家や美術のパトロンたちの生涯をたどる。彼らの生涯はまさしく彼らの所属する集団、ユダヤ人に対する理不尽な差別を跳ね返す闘争の一環だったと言える。ホロコーストなどのユダヤ人に対する根強い差別の根深さを改めて思わずにはいられなかった。2016/08/24
M
4
ユダヤ人が画家という職業を公然と選択するには、偶像崇拝の禁止という戒律と向き合わねばならず、その解消には18世紀以降の啓蒙主義を待たねばならなかった。19世紀の印象派で有名なピサロの色彩理論がユダヤ性の点でも言及されていたこと、ユダヤ人がウィーン分離派のパトロンであったこと、シャガールの幻想さの背景には母語であるイディッシュ語とハシティズム文化があったこと、ロスコの独自の様式の過程に嘆きの壁への祈りと共通性があることが印象的だった。同化とアイデンティティとの葛藤を経験したユダヤ人画家に特に興味を持った。2020/02/20
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