内容説明
空手道場に集まった胸に同じ形の青あざがある頑強な三人の男たち、路地に生まれたタツヤ、在日韓国人二世のシム、アイヌモシリのウタリ。そのアザの形に旧満州の地図を重ね見た右翼の大物フィクサー槙野原は三勇士による満州国の再建を説く。日本の共同体のなかにひそむうめき声を路地の神話に書きつづけた中上健次が新しい跳躍を目指しながらも、「群像」連載中急逝し、未完に終わった傑作大長篇小説。死してなお生き、未完ゆえに無限増殖する壮大なる中上サーガ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真琴
13
胸に青アザを持つ出自の異なる男たちの物語で、中上健次未完の長篇小説(本書では解説含め950P) 戦前から敗戦そして現代を通して、天皇や沖縄、アジア、戦争責任といったことを考えながら、日本人である前にアジア人としての自分自身を見つめたいと思ったのは初めてかもしれない。2024/07/08
フリウリ
10
図書館の新刊コーナー。満州を軸に南西諸島の孤状連帯に反体制を見出す構想。アウトローのカーニバル小説、風刺小説で、水滸伝や八犬伝を想起しました。ここまで壮大な物語に現実感があるのは、やはり先の戦争をめぐる「大きな物語」を踏まえてのこと。この国の急所を確かに突いていて、右翼や左翼を自認する人たちも読むといいと思います(読むわけないか…)。著者本人とおぼしき嗜虐的でおちゃめなシナリオライター、そして夏芙蓉の甘い香りが、効いています。解説は真面目(過ぎ?)な文芸批評で、最近の文庫解説とは一線を画しています。92024/08/07
saeta
9
中上の死によって未完のまま残された900頁超の大長編小説を一月ちょっと掛かり読了。まだまだこんな凄い作品に出会えるとは大いなる喜びだ。足掛け9年もの間、雑誌連載を続け変わらぬテンション維持し書き続ける情熱、飽くなき執着心は恐れいる。身体の同じ場所に青いアザを持つ3人の空手の猛者達をを中心に石垣島、台湾、フィリピンのダバオと南方亜細亜に転々と舞台を移し壮大に展開する物語。残念ながら数10頁ぐらいを残し終わってしまったが、中上が残した創作ノートも記されており、なるほど結末はこうするつもりなのかと感慨深い。2025/06/09
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