内容説明
厳寒の森に「移民兵器」として放たれるクルド人家族、鉄の棺桶のような船で地中海に漕ぎ出すアフリカの人びと、徴兵を逃れて雪の山に消えるウクライナの青年たち……。秩序が崩れ落ちる欧州に出現した“パラレルワールド”を往還しながら、圧倒的な取材力で「新世界」のリアルを可視化する第一級の現場報告。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kan
30
よくぞ現場に行って書いてくれた、伝えてくれてありがとう、と叫びたくなった。22年2月24日から変わってしまった世界の人・物・金の流れ、怒りの波、脱出の理由、逃亡ルート…。まさに地殻変動なのだと思う。前著「エクソダス」も衝撃だったが、本書もブチャの報告をはじめ、地中海の難民危機@ランペドゥーサ島など、言葉にならないほどの凄絶な現場を伝える。ウクライナとルーマニア国境のことやポーランドの反応は初めて知ることで、22年にウクライナから私のクラスに転校してきた生徒の避難ルートや残された父親を思い浮かべてしまった。2024/10/10
kuroma831
14
欧州に拠点を置くフリージャーナリストによる、移民・難民の押し寄せるヨーロッパのルポルタージュ。前作である中南米からアメリカに移民する旅路を追ったルポルタージュ『エクソダス』が非常に面白かったので、応援も兼ねて読了。非常に面白かったが、時系列的な取材が元ネタのため、前作よりテーマは散っているようにも思えた。しかし、ベラルーシからポーランド国境を渡ろうとして押し返される中東難民や、ウクライナ避難民、地中海を船で密航するアフリカの移民等、様々な移民・難民の姿と、それに対するEU諸国の姿が見えたのは面白かった。2024/08/10
MioCastello
8
『エクソダス』続編と言える作品。舞台は西欧、東欧、北アフリカに移る。ここでも移民問題の根っこは富める国々の身勝手な搾取が原因であることが良く分かる。 西側諸国は大上段から民主主義を押し付けようとするが本気でそう思っているかは甚だ疑問だ。 現にアラブの春以降北アフリカ諸国が真の民主国家となったという声は一向に聞かない。 移民供給側で永遠に続くかと思われる政情不安も、奴隷の様に都合よくポイ捨てできる安価な労働力を枯渇させないため、経済発展を意図的に阻害しているのではなかろうかと勘ぐってしまうほどだ。⇒続く2025/01/05
お抹茶
4
生粋のジャーナリストという取材魂。ウクライナの戦地や周辺諸国への移動状況,地中海での密航を取材する。ベラルーシとポーランドの間の森で,ベラルーシの観光ビザを持った難民が「移民兵器」としてポーランドに送られ,ポーランドによって跳ね返されるというピンポン状態に。ドネスク州では命の危険を覚悟で人々が帰ってくる。密航拠点のチュニジアでは,母国に希望がない人々が命懸けの密航を何度失敗してもチャンスを待っている。出国できず兵役を強要されるウクライナの「天井のない監獄」状態も取材。どこでも,暗躍する「旅行業者」がいる。2024/08/22
Go Extreme
4
森に放たれた兵器たちーポーランド、ベラルーシ国境: 氷点下の森の赤ちゃん ヘイト攻撃 密航の海ーイタリア、地中海リビア沖: 追いはぎの国 ゲームという名の密航 脱出の足跡ーオランダ、ドイツ、ポーランド、ウクライナ; 子どもだらけの避難民 死の通りーウクライナ北部ブチャ: 地下壕の人質 浄化と呼ぶロシア兵 裏表の空間 モルドバ、ウクライナ 家の匂いー日本、オランダ、ドイツ、ポーランド、ウクライ 鉄の船ーイタリア、チュニジア 踏み絵の国ージョージア ジレンマの大陸ードイツ、ポーランド、ウクライナ、ルーマニア2024/08/21