内容説明
世界には国境とは異なるさまざまな「見えない線」が存在する。
この境界線は細い線ではなく、地帯というある程度の広がりを持つ場合がある。こうした境界線・地帯は時代によってしばしば変化し、われわれと彼らを分断する原因となっている。
サッカーチームのサポーター立ち入り禁止区域から、不可解な進化の分岐点、
デトロイトの悪名高き“8マイル・ロード”に沿って根強く残る人種分離、
いまはもうない“鉄のカーテン”を越えるのを拒むシカの群れまで、
私たちの世界が地理的、気象的、政治的、経済的、文化的、宗教的にどのように分断されているか、そしてなぜ分断が必要だったのかを、地理学の講師マキシム・サムソンが30か所取り上げ、その歴史と特徴を説明する。
世界の理解に役立つ、地政学リスクの解像度が上がる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よしたけ
48
グローバリゼーションにも関わらず多くの隣接する地域が分断されている現実を解説。細かく章立てされ、様々な事例に触れることができ有意義。興味深かった内容:森林保全が進むが極北地域にて温暖化での森林拡大は生態系破壊につながる、中国では南部と北部で大きな気温差があり北部は電力に多額の投資が必要であり経済成長を阻害、日付変更線は恣意的な設定も多く中国は本来5つの時間帯が入るが単一時間帯を使用し北朝鮮は意図的に30分遅らせていたことも、マラリアは人を介してのみ拡大、グッドバイはGoodBewithYouの短縮形。2024/10/18
よっち
24
世界に存在する国境とは異なる「見えない線」。どのように分断されているか、なぜ分断が必要だったのか、その歴史と特徴を説明する1冊。コカラル・ダムがもたらしたアラル海の激変、国際日付変更線、トルデシリャス条約、ブエノスアイレスのサッカー、パリの郊外など、地理、気象、政治、経済、文化、宗教といった様々な事情で分断された30か所を解説していて、世界の見えない境界線が暮らしにどのような影響を及ぼしたのか、時代によりしばしば変化して、人々を分断する背景となった自然の力や歴史的経緯にはいろいろ考えさせられる内容でした。2024/07/04
紙狸
15
2024年3月刊行。原著は2023年。著者はシカゴ・デポール大学の地理学の講師。地球上の境界線をいくつかの種類に分類して、それぞれの実例を論じる。紙狸には、この種類分けに説得力があるかどうかは分からなかった。実例の中にはヘエーと思ったものがいくつかあった。中国の秦嶺・淮河線は国土を南北に分ける。北は蒸しパン、南は米を主に食べる。共産党はこの線より北で集中暖房システムを整備した。インドネシアの列島の2種類の動物相を分ける「ウォレス線」、ブエノスアイレスのサッカーチームと地区の関係―と実例は広範囲に及ぶ。2024/09/19
yoneyama
7
翻訳調文章ではあるがさまざまな境界線の紹介をするテーマ。印象に残ったのはウオレス線、サルガッソー、南極海流、マラリアベルト、アラル海、トルデシャス線、ウラル山脈など。いずれの線も不思議、という印象はない。線の紹介として読んだ。北センチネル島は、あらためて読み、面白かった。日付変更線に関する様々な小ネタも記憶に残る。スペインの例、両サモアの例など。謎めいたタイトルだけど、いろんな線の由来紹介本だ。2024/10/31
malty
0
「領有権を主張したがる傾向は、政治指導者とその支持者だけの専売特許ではない」「たとえばニンビー主義(NIMBYism “わが家の裏庭だけはノー”not in my backyard)がどこにでも見られることに気づくはずだ」「ニンビー主義者は開発を認める場所と抵抗しなければならない場所を分ける、目に見えない境界線を頭の中に引いているのだ」2024/10/06