内容説明
業を背負う男たち、奇蹟のロードノベル。
兄さん、今からあんたを殺しに行くよ――。
大阪ミナミでカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、ある日一通の絵葉書が届いた。葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。50年前、紘二郎の住む廃病院で起きた心中事件。愛した女、その娘、彼女たちを斬殺した兄……人生の終盤を迎えた紘二郎は、決意を固めた。兄を殺す、と。
思い出の旧車を手に入れ、兄の住む大分日田へ向かおうとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。必死に止めようとする様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。
かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の昏い過去。あまりにも陰惨な心中事件の真相とは。リュウの身体に隠された秘密とは――? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。2020年直木賞候補となり、いま最も注目を集める作家が贈る、渾身の一冊。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『緑陰深きところ』 の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
66
★★★★☆24110【緑陰深きところ (遠田 潤子さん)】遠田さん作品を読む度に思うのは『ハズレなし!』(いつも同じ事を言ってますが。笑)本作品、紘二郎(主人公70代男性)と兄の征太郎(紘二郎の5歳年上)、兄のいいなずけである睦子、この3人の微妙な関係が主軸にあって、現在と過去を行き来しながら話が展開していきます。紘二郎は若い頃憧れていた車を手に入れて大阪から兄が居るであろう大分まで兄を殺しに出発するのですが、クルマを購入した店の店員だったリュウ(25歳男)が成り行き的に便乗することに...良かったです。2024/11/20
カブ
34
遠田潤子作品が好きで、期待していた通りよかったです。大分に居るらしい兄・征太郎を殺しに行こうと決めた紘二郎。思い出の車、コンテッサを手に入れ大阪から大分に向かって出発する。ひょんなことから孫ほど年の離れた男、リュウを運転手として2人の珍道中が始まる。ロードムービーのような、好みの展開である。読んでよかった。2024/12/30
エドワード
33
大阪・四天王寺でカレー屋を営む老人・三宅紘二郎には、兄の許嫁と駆落ちの後、引き離された過去がある。昭和47年5月―千日デパート火災の翌日―兄が、妻の父と妻と娘と無理心中を図った。兄は服役し出所する。ある日、紘二郎の元に兄から漢詩のみの葉書が届く。彼の暗い過去が蘇り、彼は兄を殺しに日田へ向かう。彼に赤いコンテッサを売った、壮絶な過去を持つ蓬莱リュウが同行する。倉敷、岡山を経て日田。兄は死んでいた。肺がんで瀕死のリョウに紘二郎は「君は独りでは死なん」と声をかける。著者の書きたかった、究極のハッピーエンドだ。2026/03/01
Kazuko Ohta
24
暗くて重い話なのに微かな光が見えます。想い合っていた女性と無理やり引き離されたうえに、彼女を奪い去った兄によって彼女とその娘が殺されてしまった。その兄から半世紀近く経って届いた葉書を見て、兄を殺しに行く決意をする主人公。そしてなぜだか現地まで同行することになる若者。主人公よりは若いけど、同じく昭和から令和を生きている者として、さらには大阪に馴染みがある者として、こんな話が実際にあるわけはないけれどあるかもしれないと思わされます。これもひとつのハッピーエンド。余談ですが『ボックス!』と舞台がかぶっています。2024/07/29
リュウジ
12
★4終章は2度読み返した。とても悲しい、でも堂々とした人間の後悔の物語。70歳の爺さんが25歳金髪若者をお供に兄を殺しに行くため、四天王寺から日田へ旧車で行くロードノベル。ヤマ場と見せ場とサプライズがいっぱい。登場する人たちの、自分の得たい幸せが他人を不幸せにしていくこわさ。その事を後悔しさらに生きている間は「後悔に終わりが来ないこと」のこわさ。それでも登場人物たちは様々な出逢いを通して自身の気持ちを溶かし生きる意味を捉え直す。それはただの自己満足かもしれないけどね。でも人生はそうするしかないのかもね。2026/03/13
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