内容説明
「弁証法的行動療法」(Dialectical Behavior Therapy:DBT)は,治療困難な境界性パーソナリティ障害(BPD)に対し有効であるとして立証され,欧米においては広く支持されている注目すべき治療法である。現在,日本でも関心が高まってきており,BPDへの新しいアプローチとして期待されている。
本書はDBTの開発者マーシャ・M・リネハンが,この治療法について具体的に解説したものである。治療構造,各種ストラテジーの手順とトレーニングへの適用,各セッションへの導入と進め方に始まり,身につけるべきさまざまなスキルについて,いかに患者に説明し,実践で使えるようにトレーニングしていくか,その具体的な道筋までが段階を追って詳述されている。さらに,患者たちと話し合うべきトピック,ドロップアウトや自殺的行動を防ぐためのコツやルールの設定など,治療上役立つ注意点についても丁寧に触れられている。また本書の後半は,患者に配る宿題シートや資料となっており,トレーニングに使いやすいように工夫がされている。
DBTの考え方とその治療のすすめ方が具体的にわかる,極めて実用的な1冊である。
境界性パーソナリティ障害に有効な治療法として注目を集める弁証法的行動療法の考え方とその治療のすすめ方を,開発者リネハン自身が段階を追って具体的に解説した極めて実用的な1冊。患者に配る宿題シートや資料といった豊富なワークシートを付す。
目次
第1章 境界性パーソナリティ障害に関する心理社会的スキル・トレーニングの理論
理論の概観と基本的見地について
BPDの生物社会学的理論
感情調節障害における無効化する環境の役割
感情調節障害の病理学的成因
治療プログラム
BPD患者に対する認知行動療法の改善
次章に向けて
第2章 心理社会的スキル・トレーニングにおける実践上の課題
個人 対 グループのスキル・トレーニング
オープングループ 対 クローズドグループ
治療モジュールのサイクル
複合グループ 対 単一グループ
心理社会的スキル・トレーニングにおける個人精神療法の役割
グループリーダー
第3章 セッション形式とスキル・トレーニングの開始
セッションの形式と構成
スキル・トレーニングの開始
第4章 構造化ストラテジーとスキル・トレーニング手順の心理社会的スキル・トレーニングへの適用
構造化ストラテジー
スキル・トレーニング手順
第5章 他のストラテジーと手順の心理社会的スキル・トレーニングへの適用
弁証法的ストラテジー
問題解決ストラテジー
有効化ストラテジー
変化の手順
様式化ストラテジー
ケース・マネジメント・ストラテジー
特別治療ストラテジー
第6章 心理社会的スキル・トレーニングのセッションごとのアウトライン
セッション1:スキル・トレーニングへのオリエンテーション
セッション2:コア・マインドフルネス・スキル
セッション3~7:特定モジュールのスキル
セッション8:最終セッション
第7章 コア・マインドフルネス・スキル
マインドフルネス「把握」スキル
マインドフルネス「対処」スキル
第8章 対人関係保持スキル
モジュールの目標
内容の概略
第9章 感情調節スキル
特別な感情調節スキル
内容の概略
第10章 苦悩耐性スキル
モジュールの目標
内容の概略
配付資料と宿題シート