内容説明
切手集めに情熱を注ぐフィリップ少年は7歳。営業マンの父と快活な母、絵が上手な兄サンディとニュージャージーのユダヤ人地区で暮らしていた。1940年、そんな平穏な生活を揺るがす大事件が起こる。ヒトラーの友人であり反ユダヤ人主義のリンドバーグが、ローズヴェルトを破ってアメリカ大統領に当選したのだ。――じわじわと差別が広がり、人権が蝕まれていく混乱と恐怖、ありえたかもしれないファシズム擡頭をひとりの少年の目から描いた、フィリップ・ロス最高傑作とも評される歴史改変小説!
目次
1 一九四〇年六月――一九四〇年十月 リンドバーグに一票か、戦争に一票か
2 一九四〇年十一月――一九四一年六月 大口叩きのユダヤ人
3 一九四一年六月――一九四一年十一月 キリスト教徒の跡地ついて
4 一九四二年一月――一九四二年二月 切株
5 一九四二年三月――一九四二年六月 いままで一度も
6 一九四二年五月――一九四二年六月 あの連中の国
7 一九四二年六月――一九四二年十月 ウィンチェル暴動
8 一九四二年十月 暗い日々
9 一九四二年十月 終わらない恐怖
資料
訳者あとがき
文庫版あとがき
著者プロフィール
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
31
1940年代は我々にとって歴史である。だがここは、三選を目指すローズヴェルトの対抗馬だったリンドバーグが大統領に選ばれた世界。親ナチで反ユダヤ思想を持ち、アメリカ主義を掲げるリンドバーグが大統領になったことで、アメリカは少しずつ、しかし確実に歴史から逸脱していく。21世紀を生きる読者である我々は歴史が味方をしてくれるので、容易にリンドバーグの政策に嫌悪と反感を抱くことができる。けれど、ユダヤ人の家族であるロス一家の父と母、長男や次男が分断されていくように、(つづく)2024/05/20
わたなべよしお
13
残念ながら、あまりに面白くなく、半分くらいまで頑張りましたが、断念します。実に退屈だった。米国では評価の高い作品のようだけど、どうだろう?米国系ユダヤ人が読むと、リアリティに満ちていて、感じるところが多々あるのだろうか。私的には相当、我慢して読み続けたが、もう無理ですね。2024/11/16
春ドーナツ
12
8年前に新潮文庫で読んだ「素晴らしいアメリカ野球」の無比の読後感の余韻は現在も色あせることなく、WEB本の雑誌の新刊コーナーで本書を見つけると、店を畳むけれど配達は続ける近所の村上書店に渡すメモに書き込んだ。英語が不得手な私はタイトルの意味が気になる。「アメリカに対する陰謀」。悲惨な話なのだけれど、第三者としてはおかしみを覚える場面が散りばめられている。7歳の少年が主人公ということも手伝ってディケンズを想起した。歴史改変ものを紐解くのは初めて。ただ巻末の資料に目を通すと、荒唐無稽なものではないことがわかる2024/07/28
たー
5
第2次大戦期のアメリカを舞台にした歴史改変小説。ルーズベルトを敗り大統領となったリンドバーグにより進められる反ユダヤ政策で崩壊する家族とコミュニティをロス少年の視点で描く。今アメリカで起こっている分断も構図としては似たような感じなのだろうかと思いながら読んだ。2024/07/28
いっこ
5
1940年のアメリカ大統領選挙、ヒトラーを支持する飛行家リンドバーグが、F・ルーズベルトを破って大統領に就任するという歴史改変小説。著者と同じ名前を持つフィリップ・ロス少年の目を通し、激変する社会が描かれる。リンドバーグがヒトラーを支持したのは、歴史改変ではなく真実のことであり、「アメリカを世界戦争に巻き込みたくない」という施策が訴求力を持ったのもありそうなこと。現実は今、私がみている世界だ。歴史の波にもまれ、少年の一言により友達の家族が不幸になる。少年の心の傷は、いつまでも残るのだろう。2024/06/28