内容説明
自己責任論を超える思想 いまこそマルクスを読み直せ!
私的所有という考えに仮借なき批判を加え、他者との分かち合いにもとづく政治体=コミュニズムを構想したマルクス。浅薄な自己責任論が強調される今こそ、そのポジティブなメッセージを汲み取るべきではないか? 個人主義を超える〈生の技法〉=コミュニズムの現代的可能性をさぐる。
[内容]
はじめに
第一章 「私的所有」の感覚を疑う
第二章 〈労働者身体〉はいかにつくられるのか
むすびに──「集合的身体」のほうへ
マルクス小伝
読書案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
23
足場として確保しておきたいのは、ここで打ち出されている、マルクスに独特な─と、とりあえずはいってよいだろう─「自然主義=人間主義」の厚みを受け止めておくこと/「各人はその必要に応じて」の含意を著者の読み解きにおいて語り、社会主義の名の下に行われた蛮行への一つの解答を試みつつ、表題の「いま、コミュニズムを生きる」ことを述べている本だと読みました。2018/03/10
masawo
9
私的所有の観点からマルクスの思想のベースを読み解み解いていく。コミュニズムに焦点をあてたマルクス解釈論といった方向性なので、入門書的な位置付けではないと思う。参考文献が豊富に示されているのはありがたい。著者なりのマルクス観が凝縮されており、なかなか面白かった。2021/03/29
しんすけ
8
金のために人は働くのではない。金のために働くのは奴隷的根性であって人間には不要なものである。マルクスは根底で労働を個々人の能力表現と把握していたようである。本書では、上からの指図で機械的に働くコンビネーションではなく、個々人の意見を尊重して共同化が行われるアソシエーションがマルクスの根底にあったと説く。だが資本主義社会では、それを実現できるのは限られた人間でしかない。99.99999%が奴隷として生きるしかない。生きるために金のために働かざる得ないのが資本主義社会というものなのである。2018/03/04
♨️
3
マルクスを「身体」概念から読んでいく本。わが物として所有・管理していくような身体に対し、自然を享受する・生かされている身体という身体の二面性、および、複数の人間の中で他人の心を感じ合い関わり合う「社会的身体」(「共通感覚」!)という位相を、マルクスのコミュニズムの議論と結びつけつつ読解していく。「働いて得たものは本当にあなただけのものなのか?」「働き方は誰に教わったのか?」「仕事道具は誰のおかげであるのか?」「働きかけた自然をあなたのものにしていいのか?」「だとすれば、あなたが働いて得たものを、2021/04/26
左手爆弾
3
2004年の出版なので、おそらくは個人主義や私的所有を強調するリバタリアン的な考えに対抗したものと思われる。人間の本質は「社会的諸関係の総体」である。別な言い方をすれば、個人といっても、その能力を発揮するためには周囲との関係を必要とする。アリストテレスが考えたような「共通感覚」についての洞察が必要。他人の欠乏を満たしてあげようと応じるとき、我々は集合的な生を既に肯定している。今となっては少し弱い気もするのだが、冒頭の問題設定に対する立場は示してある。2016/12/17