内容説明
ファンタジー界に新鋭誕生! 第29回松本清張賞受賞作。
草原に額縁を立て、その中で演手たちが物語を繰り広げる──。
山羊の群れを連れて遊牧するアゴールの民がこよなく愛する芸術「生き絵」。
物語をつくる「生き絵師」のマーラは、若くして大役に抜擢される。
だが、そこに突然の災厄が……。
“動くもの”が全ての人々に見えなくなってしまったのだ。
表情も動作も伝わらないという苛酷な現実を突きつけられるマーラは、
農耕の国・稲城の街で、城を追われた奇術師・苟曙と出会う。
もはや「生き絵」は無力なのか。
アゴールの民の運命は?
「文学という古今東西、広大な地図の上に“天城光琴世界”の芽は吹いた──。
ファンタジー、SF、演劇ドキュメンタリー、ミステリー・サスペンス的な世界の反転、
CG映画のような生き絵の描写──すべてが詰まった贅沢な一冊だ」
──書評家・卯月鮎
※この電子書籍は2022年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
※単行本『凍る草原に鐘は鳴る』を文庫化にあたり改題しました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
36
ファンタジーが故の不思議さにイマイチ入っていけませんでした。2024/07/16
よっち
30
山羊の群れを連れて遊牧するアゴールの民がこよなく愛する芸術「生き絵」。若くして大役に抜擢された物語を作る生き絵師マーラが、過酷な現実を突きつけられるファンタジー。突然、動くものが視界から消えてしまうようになり、表情も動作も伝わらないという苛酷な現実を突きつけられたマーラ。彼女が農耕の国・稲城の街で城を追われた奇術師・苟曙と出会い、似たような境遇の2人が出会ったことで物語が動き始める展開で、やり切れない現実に直面しながらも諦めず逆境に立ち向かい、その中で希望を見出してゆく結末には心打たれるものがありました。2024/07/09
ハッピーハートの樹
5
ずっと変わらないものなんかないから、常に変化を受け入れて、自分自身も変わっていくことは大切なんだと思います。でも年を取ってから特に、前の方が良かったと思ってしまうことが多いのが否めない。変化に必要なパワーが無くなってきたのかな。違うな、変な自信?プライド?成功体験が逆トラウマな感じで変わることが怖いだけなのかもしれません。そもそも成功したことだって紙一重のタマタマかもしれないし、やり方が違っていたらもっと良くなってたかもしれないし。朝起きたら新しい自分、今日がこれからの人生の初日、の精神を忘れずにいよう。2025/01/09
samandabadra
3
モンゴル好きは無視して通れないような表紙でまさにジャゲ買いした一冊。遊牧民に違和感はあまりない。特徴としては劇に重きが置かれる人々という設定がSFファンタジー的な要素かも。何より、この地域全体で変化が起こってしまうことで社会的にある種の営みが難しくなるというところがWhat if 的なSFの設定となっている。だが、その設定を解決する行動を起こすものではなく、変化にどう適応し、その後を生きていくかに焦点があって、大団円ではなくて「その後も人生は続く」といったヨーロッパ的な映画っぽい作品に見えた。秀逸2025/01/02
ya31r
2
ファンタジーなんだけど実際に自分も視覚障害ができたらどうなるんだろうなと考えさせられました。 芸術のジャンルの利点の違いとかがコロナが流行した時のこととなんとなくと重なるような感じでした。2024/07/22