内容説明
ファンだったアーティストの担当になった若手レコード会社社員、期待に応えようとするあまり、心身を壊してしまった40代手前の女性、恋の予感にときめくカメラマン、合唱コンクールで曲のアレンジを任された女子高生、リサイクルショップで壊れた物を修理し続ける男性――。彼らの人生の岐路に寄り添っていた一つの音楽が、場所や時間を超え広がっていく奇跡を、ミュージシャンとしての経験を持つ著者が描いた連作短編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぼっちゃん
58
売れなくなりミュージシャンをやめる最後に出した曲「夢のうた」が、その後色々な人の心に残る思い出の曲となっていく連作短編集。辛いとき自分を救い出してくれたり、誰かの大切な思い出になったり、人の心に大きな影響を与える力が曲には確かにあったりしますね。カバー裏に作者のメッセージがありましたが、自身もミュージシャンであらゆる創作と向き合う方、それを応援する方のヒカリになればと書かれた作品ということだが、応援する方と入っているのがこの作品を表している。お薦めです!2024/06/22
れもん
37
図書館本。連作短編集。シンガーソングライターの染谷の最後の曲が、いろんな人たちの心に響き、心に寄り添う。その想いが巡り巡って、立ち止まってしまっていた染谷のもとへ。。染谷の最後の曲が、染谷の知らない所で聴いてもらえているシーンになるたびに、「染谷さん!気付いて!こんなに愛されてるよ!」と、それが染谷のもとに届いたときには、「良かったね!本当に良かったね!」と胸いっぱいになった。曲って、その人の心の中に在り続ける。思い出や想いと共に、いつまでも心の支えになってくれる。忘れ去られるものではないと思った。2025/07/06
ひめか*
37
一つの音楽が誰かの人生に影響を与え、糧になる。ファンとして追いかけて仕事に繋げた者、心の病を患った時に救われた者、恋人と聴いた曲としてひと夏の恋の思い出になった者、合唱曲として歌い、青春の1ページになった者…人生のそれぞれの場面で、一つの曲が影響を与えていく連作短編。音楽の尊さが丁寧に描かれていて、優しく沁みた。昔の曲が時を超えて次世代で流行ることはまさによくある。元ファンのプロデューサーが成長するとともに、アーティストの心も動く、二人の関係性も胸熱。作者がバンドのドラマーだとは知らず驚いた。装丁も好き。2024/10/01
まる子
26
私にも忘れられないアーティスト、楽曲がある。それを聴きながら自分を励ましていた事を思い出す1冊だった。あの頃は新人で売り出していたアーティストの染谷達也。彼の楽曲に励まされた過去を持つテラ。彼が引退を前に最後に作った『夢のうた』が、令和の今、様々な人とが出会い繋げる。言い訳ばかりのあの頃、本来の歌詞に自分も気づいていなかった。「良いものってなんだろう?」それは、それぞれが感じること。染谷達也こと海は今どこを向いて歩いているのだろう。「インフルエンサー」を知らず「インフルエンザ?」と言うくだりに笑った(笑)2024/11/12
katsukatsu
24
シンガーソングライター染谷達也を巡る物語。染谷のマネージャー、仕事に疲れた女性と大学時代の友人、一緒に動画をつくるカメラマンとスタイリスト、合唱コンクールに挑む女子高生とそれを手伝う音楽教師、様々な人たちが染谷の曲に関わっていきます。どの話も良かったのですが、特に合唱コンクールの話は、時代の閉塞感を伝えるとともに、今の時代もそんなに悪くはないなと思わせてくれる、不安の中にも、その先に光を見せてくれた物語でした。音楽が人に伝えるものは何か。音楽の力を暖かな光に乗せて紡いでくれた素敵な一冊でした。2025/01/05
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