内容説明
「立派なお坊さんになるのですよ」
母の願いを受けて、安国寺で修行する幼い千菊丸だが、禅寺は腐敗しきっていた。怠惰、折檻、嫉妬、暴力。ひたすら四書五経を学び、よい漢詩を作らんとすることをよすがとする彼の前に将軍寵臣の赤松越後守が現れ、その威光により、一気に周囲の扱いが変わっていく。しかし、赤松は帝の血をひく千菊丸を利用せんとしていることは明らかだった。
建仁寺で周建と名を改め、詩僧として五山の頂点が見えたのにも拘わらず、檄文を残して五山から飛び出して民衆の中に身を投げる。本当の救いとは、人間とは、無とは何なのか。腐敗しきった禅を憎み、己と同じく禅を究めんとする養叟と出会い、その姿に憧れと反発を同時に抱えながら、修行の道なき道をゆくのだった。己の中に流れる南朝と北朝の血、母の野望、数多の死、飢餓……風狂一休の生そのものが、愚かでひたすら美しい歴史小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ@no book, no life.
149
幼少の頃アニメで観ていた一休さんとは異なる事は大人になるに従って理解はしていた。更に本作はそれを破戒してくれた。そんな木下氏の描く一休である。破戒する一休、風狂子一休等多数の名と共に出自と母への愛に苦しむ姿、そして禅の途を極めようとする姿。フィクション部分はどれだけあるのだろうか。木下氏らしい筆致でそんな事を考えさせる暇無きまま頁は進んでいったのである。と、最後に。一休の出自は本当なのか後程調べてみたい。2025/06/01
いつでも母さん
139
面倒くさい・・生い立ちも時代背景も、禅も、修行も。宗派や高僧、戒律等々・・今現在へ続く仏の道全てが胡散臭く思えてしまう。すなわち裏を返せば人間臭いということなのだろうな。一休さんて長生きだったのね(そこ?)「母上様」とアニメの声が甦るけれど、こんな母上はイヤだ(そこ?)大作の木下版・一休宗純をなんとか読了。私の知らない一休さんがここにいた。2024/06/30
trazom
138
「とんちの一休さん」で知られる一休宗純の評伝小説。ほのぼのとした生涯かと思いきや、物語は重く暗い。後小松天皇のご落胤としての生い立ち、南北朝の対立、赤松氏や山名氏などの守護大名の思惑、五山の横暴と臨済宗の腐敗などのドロドロの状況が背景にある。一休自身も、決して清廉潔白ではなく、女犯や酒色・肉食に溺れる破戒坊主。しかし、腐敗した禅を正すため、公案を通じた禅道修行に励む姿には、鬼気迫るものがある。どこまでが史実なのかを知る由はないが、政治的にも宗教的にも堕落の縁にある室町という時代に抗う壮絶な生き様を知る。2024/07/05
のぶ
112
木下さんの新刊は室町時代の禅僧、一休の半生を描いた作品だった。今までアニメでしか知らなかった、真の人物像を読みやすく、分かりやすい文章で知る事ができた。幼名は千菊丸と呼ばれ、長じて周建の名を与えられ、やがて宗純、そして臨済宗の寺で一休の道号で老師として世に出る事になる。一休の生きた時代は、南北朝の時代で本人自身、南朝の血を引き継いでいる。読んでいて率直に感じたのは、一休自身が歴史を動かすような大きな事をしていない。その代わり周りの人に慕われてきたことがよく分かった。生そのものが、愚かで美しい一冊。2024/06/19
たいぱぱ
85
アニメの「一休さん」で育った世代だから破戒僧と言われてもしっくりこなかった。この木下流・一休宗純の物語を読んで理解できたのだが、破戒してるのは京都五山の僧たちの方じゃないか!と憤ってしまう。最も今は違うとは思うが、好きでよく行く南禅寺や建仁寺、大徳寺なんか見る目が変わってしまいそう…。禅問答(公案)とはこういうものとはじめて知った。禅を極めようとして精神が破壊されては本末転倒。そして宗教と権力が結びつくところに人間の幸なし。現在の世界情勢をみれば一目瞭然だと思う。人の弱さと欲望は狂気に侵されやすい。2025/01/06
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