内容説明
U国A州の空軍基地にある『飛行機の墓場(ボーンヤード)』で、兵士の変死体が発見された。謎めいた死の状況、浮かび上がる軍用機部品の横流し疑惑。空軍少佐のジョンは、士官候補生時代のある心残りから、フラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣へ非公式に事件解決への協力を請う。実は引き受けたマリアたちにも、過去に対峙した事件への苦い後悔があった。高校生の漣が遭遇した雪密室の殺人。ハイスクール時代のマリアが挑んだ、雨の夜の墜落事件の謎。そしてバディを組んだ二人が初めて捜査した、緊急通報があった家庭での悲劇の真相は? シリーズ初短編集。/【目次】ボーンヤードは語らない/赤鉛筆は要らない/レッドデビルは知らない/スケープシープは笑わない/解説=香山二三郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
神太郎
44
マリア&漣シリーズも第4弾、そして全体としては各主要キャラの過去を語る掘下げ回になってる。ジェリーフィッシュで鮮やかにバディとして我々読者の前に現れた2人、その過去と初めての事件を描く。また表題作はジェリーフィッシュの後日譚かつジョンの過去回想編でもあるのでこちらも見逃せなかった。登場人物一人一人に傷があって、より人物造形に深みが増したなと思う。第5弾も刊行され益々本シリーズの勢いは増しそうだな。ヴァンプドッグ文庫化まで首を長くしてまつとしよう。2024/07/12
綾@新潮部
29
このシリーズ好きなので文庫化を待っていたのに積んでいたw ジェリーフィッシュ事件の後の話、レンの過去の話、マリアの過去の話、ジェリーフィッシュ以前の話、と短編だけど盛りだくさんだった。レンとマリアの過去の話が良かったなぁ。驚いたり切なくなったりで感情が忙しかったけども。シリーズ読んでるからこそ楽しめる感じもあったが、もしかしてこれから入るのもアリなのか?いや、やっぱり出版順がいいか。2024/12/22
火の壁
23
ジョン、九条漣、マリア・ソールズベリーの前日譚と、九条とマリアの初捜査を描いた内容。全編通してハウダニットはふーんという感じで、「グラスバードは還らない」や「ブルーローズは眠らない」に引き続き意外な犯人に若干取ってつけたような動機な印象だった。「レッドデビルは知らない」のヴィンセントは、権力がありつつ頭もよく回るずる賢い系のヒールでキャラ立ちしていたが、そこから更にあの性的嗜好を持たせるのはちょっと情報量を盛りすぎな感じもあり。2024/12/18
bayashi
22
シリーズ初の短編集でキャラクタの掘り下げ。特殊設定は無し。そのせいなのか短編だからなのか、既刊の3作で魅力に感じていた「その作品世界ならではの綺麗さ」みたいなものは無く、またテーマが重いものばかりで本格ミステリとしてどうこうの前に読んでてリアルに暗い気持ちに。。ジョンが頑張ってる表題作が一番よかった。2024/09/26
hiro 17
22
シリーズ4作目にして初短編集。表題作以外にマリアと漣が出会う前の学生のころの事件、そこから絶妙に彼らの過去へとわずかな影を引く初事件。短編集ではあるがうまく全体の構成が練られている。本短編集最後の「スケープシープは笑わない」は読者目線で容疑者がブレていて、してやられた感がある(若干強引な部分もあるが)。この感覚は同作者の他の作品でも感じることがあり、ガチガチの本格推理というよりエンタメに寄せた手品のようなカタルシスがある。2024/08/23