内容説明
本を守ろうとする3人の女性を描く歴史小説。
1933年ベルリン。文化交換プログラム参加のためにドイツに招待されていた米国人新人作家アルシアは、反政府活動に参加していたユダヤ人女性ハンナとともに、ナチスに洗脳された学生らによる焚書に居合わせた。
1936年、ナチスを逃れベルリンからパリに渡ったハンナは、自らの過ちを悔いながら〈焚書された本の図書館〉で働いていたが、パリにもまた、ファシズムの波は押し寄せていた。
1943年ニューヨーク。戦地の兵士に本を送る「兵隊文庫」プロジェクトに従事する戦時図書審議会広報部長のヴィヴは、「兵隊文庫」の検閲を推し進める議員に抵抗し、検閲の危険性を訴えるイベントを企画していた。
戦時下の3つの時代、3つの都市を繋ぎ、それぞれに本を守ろうとする3人の女性を描くシスターフッド歴史小説であり、この上なく美しい恋愛小説であり、本を愛するすべての人に送るビブリオフィリアの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
61
「特定の本以外読むのを禁じられたら?」現在の日本では現実味を感じなくても僅か80年前にはあったことで将来ないとは言えないこと。政権交代後のドイツ・第二次世界大戦前夜のフランス・大戦末期のアメリカを舞台にナチに招待されたアメリカ人新人作家・ドイツから亡命した「焚書された本の図書館」職員・夫が戦死した「戦時図書審議会」の広報担当者という三人の女性の本を護りたいという思いと行動が交錯する。この堅いテーマを恋愛・裏切り・駆け引きのエンタメの中にしっかりと包み込んで見事。本はまず読まれて読者の心を揺らすべきもの♪2024/07/07
アーちゃん
56
舞台は第二次世界大戦、1943年ニューヨークで戦地の兵士に送る「兵隊文庫」に従事する未亡人のヴィヴ、1932年ベルリンでアメリカ・メイン州からゲッペルスによりドイツに招待されたアメリカ人新人作家のアルシア、1936年パリで祖国ドイツから逃れ<焚書された本の図書館>に勤めるユダヤ人のハンナ。3つの時代・都市と3人の女性が「本」を守るべく闘うというストーリーは過去だけのものではなく、アメリカで現在進行形だという”禁書”運動に対しても疑問を投げかけている。著者のあとがきと共にぜひ読んでもらいたい一冊。2024/06/10
ろくいち
17
第二次大戦中、ヒトラーによる焚書が行われたベルリン。ドイツ軍侵攻前のパリ。アメリカから戦場にむかう兵士に本を送る兵隊文庫を規制する法律を阻止するための奮闘、少しずつ異なる時期の、本に関わる3人の女性を描いた小説。興味深い題材、3つの物語の人物に繋がりがみえてきて、と気になる部分も多かったしおもしろかったんだけど、なんだろう、翻訳が合わなかったのか。中々進まず、かなり時間がかかってしまった。でも、野球をする場面や、焚書の夜など印象的な場面もたくさんあった。こちらの調子が良い時に読めばまた違うかも。2024/11/14
フランソワーズ
16
「本への攻撃、理性への、知識への攻撃は、取るに足らぬ内輪もめなどではなく、むしろそれは、”炭鉱におけるカナリアの死”を意味するのです」(p424)。ナチスに招待された、アメリカの若い女性作家アルシアと、パリでナチスドイツの侵攻を危惧する図書館員ハンナ。そして戦場で戦う兵に送られる「兵隊文庫」に規制を加えようとするアメリカの上院議員タフトに対して反対運動を起こそうとするヴィヴ。それぞれ異なる境遇にある三人の女性が、「本を焼く者は、やがて人も焼くようになる」(ハイネ)をいう危機感を抱いて、政治に立ち向かう。→2024/09/17
おだまん
15
1933年ナチス政権下ドイツでの焚書をきっかけに描かれる3人の女性たち。シスターフッド、ミステリを交えて時代や主人公が交差しながら本を巡りひとつのミッションに繋がっていく歴史小説でもあり。この時代特有の重さよ。ここでもすべての見えない光が見えるよう。2024/07/21