ちくま学芸文庫<br> 増補 決闘裁判 ――ヨーロッパ法精神の原風景

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ちくま学芸文庫
増補 決闘裁判 ――ヨーロッパ法精神の原風景

  • 著者名:山内進【著者】
  • 価格 ¥1,430(本体¥1,300)
  • 筑摩書房(2024/05発売)
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  • ISBN:9784480512215

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内容説明

生命を賭して一対一で戦い、その結果にしたがって紛争を決着した「決闘裁判」。中世ヨーロッパに広く普及したこの裁判は、どのように行われ、いかにして終焉を迎えたのか。決闘裁判は、熱湯神判、冷水神判といった神判が禁止された以後も、1819年にイギリスで廃止されるまで存続した。それはなぜか。著者は、解決を他者に任せない自力救済の要素に、現代にまで通じる「当事者主義」の法精神をみる。法とは何か、権利や自由、名誉や正義とはどんなものかといった深い問いを投げかける法制史の名著に、「法と身体のパフォーマンス」を増補した決定版。

目次

プロローグ 『ローエングリン』──神の裁きとしての決闘/ルートヴィヒ二世/ワーグナーの『ローエングリン』/『ローエングリン』の持つ意味/オルトルートとは誰か/「神の裁き」/ワーグナーの狙い/神判と決闘裁判/第一章 神判──火と水の奇跡と一騎討ちモノマキア/中世ヨーロッパではいかに自らの無実を証明したか/自己中心的世界認識/神の奇跡/戦争という神判/キリスト教以前の神判/宣誓と神判/ゲルマン人はキリスト教化し、キリスト教もゲルマン化する/神判の拡大/熱湯神判/熱鉄神判/『トリスタンとイズー』/鋤の刃神判──聖女クニグンデ/冷水神判/決闘裁判/十字架神判と聖餐神判/神判の起源/ピーター・ブラウンの説──神判はなぜ世界中に存在したか/合理と非合理/「聖俗分離革命」/第四回ラテラーノ公会議/第二章 決闘裁判──力と神意/自力+他力/ダビデとゴリアテ/ローマ帝国の決闘裁判/グンドバッド王/一騎討ちによる決着/フランク王国に決闘裁判はあったか/なぜ「サリカ法典」は決闘裁判にふれていないのか/「リブアリア法典」/自由人の感性/決闘への懐疑/リウトプランド王の嘆き/カール大帝/フルリーの訴訟──修道院の間の決闘/神聖ローマ帝国皇帝オットー一世/オットー二世/正当防衛を証明するための決闘裁判/『ローランの歌』/判決非難/神よ、正義に光あらしめ給え/勝者を正当化する神判/自力救済の残酷/第三章 決闘裁判はどのように行われたか──賢明な仕方で運用される愚かなこと/決闘裁判はどのように行われたか/決闘裁判の三つの型/宣誓補助者や証人との決闘/誰が決闘できたのか/代わって戦う者/代理される者の拡大/決闘士とは/差別された決闘士/手を切断された決闘士/決闘士の収入/決闘の作法/決闘の保証/決闘場/牢に閉じ込められる原告と被告/決闘のいでたち/フェア・プレイの精神/勝者と敗者/和解とは何か/賢明な仕方で運用される愚かなこと/第四章 決闘裁判の終焉と自由主義/教会の禁令/王の力と封建制/決闘を嫌った都市の市民/ドゥ・カルーズュ対ルグリ/フランス最後の決闘裁判/決闘裁判がもっとも長く残ったイングランド/エリザベス一世時代の決闘裁判/共犯者告発人/ホワイトホーン対フィッシャー/陪審制の誕生/謀殺私訴/ボストン茶会事件/タイバーン荘の悲劇/アシュフォード対ソーントン事件/手袋を拾うか/決闘裁判の公式かつ法的な廃止/決闘裁判はなぜ存在したのか/自由と名誉の精神/名誉は権利と不可分である/権利のための闘争/エピローグ 正義と裁判/アメリカと中世ヨーロッパ/裁判国事主義/当事者主義とは何か/シンプソン裁判/私戦の代用としての裁判/当事者主義の原風景/欧米世界の光と陰/増補 法と身体のパフォーマンス/あとがき/文庫版あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

榊原 香織

64
ヨーロッパ中世。 戦って勝った方が正義。代わりに人に戦わせてもOK(え!) ワーグナー”ローエングリン”。 現代アメリカの裁判にはその精神的流れがあるんだとか2024/05/05

塩崎ツトム

16
神による判断から、当事者主義の決闘裁判。それは次第に法とそれを司る権威による真理へと発展していったが、その当事者間による決闘による決着という魂はアメリカ合衆国に受け継がれていて、あのO・J・シンプソン事件ですら、外からはそういうニュアンスはわからないが、まさにアメリカ式の当事者主義的な、法廷「決闘」とでも言うものだった!なるほど……?2025/05/14

MUNEKAZ

15
決闘裁判の紹介だけでなく、その底流にある中世ヨーロッパの精神を探るという感じで面白い。ゲルマン民族由来の自力救済やフェアネスへのこだわりが、キリスト教的な考え方を超えて発現している状態ということで、色々と考えさせられるなぁと。決闘裁判や神判に反対する神父たちの「神を試している」という非難のロジックも興味深い。解説にもあるが、日本は「御上が裁く」「真実を探る」という意識が強いのに対し、西洋は原告と被告の「対決」であるという指摘にも納得がいくところである。2024/01/21

素人

6
ボストン茶会事件後に植民地とイギリス本国で起こった「謀殺私訴」に関する議論が面白かった。私訴による有罪については国王に恩赦の権限がないと考えられており、廃止の反対者にとって謀殺私訴は「イングランド憲法が国王大権に対抗するための最強の障害」だった(224頁)。謀殺私訴はイングランドでは19世紀初頭まで残り続けるが、その背景には国家による真実の発見と正義の実現よりも争訟の当事者の主体的な選択を重んじる人々の意識がある。この意識はアメリカ型の当事者主義として現代の「シンプソン裁判」にまで引き継がれている言える。2025/06/27

馬咲

6
決闘の慣習や神判の記録は世界各地にあるが、「自力救済」の要素が大きい決闘裁判を、本来他力本願的な神判の一種として長期に渡り存続・発展させた点に、ヨーロッパの特徴があるという。著者はここに、現代の裁判制度にまで通じるヨーロッパの法思想の重要な側面、「紛争当事者の自立性と尊厳への配慮=当事者主義」の精神の強さを見る。その正統性を支えた中世ヨーロッパの政治的・文化的条件(突出した集権的権力の不在、キリスト教とは異質の各地域の自然信仰等)の考察から、決闘裁判の手続きから実施までの具体的描写まで、興味深く読めた。2024/08/21

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