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内容説明
役所勤めもやめ、怠惰な日々を日々を送る青年貴族オブローモフ。朝、目覚めても起き上がる気力も湧かない彼が微睡むうちに見る夢を綴った「オブローモフの夢」。長編『オブローモフ』完成の十年前に発表され、作品全体の土台となったこの一章を独立させて文庫化した。全編の抄訳付き。行動力ゼロ、気力なし、決断力ゼロ。それでも(だからこそ)ロシアン文学史上ナンバーワンの「愛されキャラ」であるオブローモフとは何者か?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
115
全巻4部の大著「オブローモフ」の第1部第9章である。全巻完成の10年前に執筆され、そのまま第1部に加えられていたもの。「現代の寓話」的風情をもつ不思議な物語。ロシアの大地主の倅オブローモフは賢いのに働きたがらずの「超ナマケモノ」であり、彼の周りを様々な人々が蠢くが、大らかに死んでしまう。親友のシトリスは呆れて彼の下を去り、恋人だったオリガも去る。アガフィアはオブローモフを「あるがままに」受け入れて結婚する…。よくもこのような物語が1849年にロシアで生まれたものだ、と妙に感心した。 G590/1000。2024/08/15
そふぃあ
29
岩波文庫版で全三巻の大長編であり、主人公オブローモフが目覚めベッドから起き上がるまでに丸々一巻を要するほど、遅々として話が進まないと言われている『オブローモフ』。本作では本編が230pに収められた抄訳版でたいへん読み易かった。怠惰で無気力な貴族オブローモフと、ドイツ人の血を汲む勤勉な実業家シトリツが対比的に描かれている。私はどちらかといえば空を眺めて過ごせたらいいタイプなのでオブローモフに共感する部分もあったが、もうどうしようもないねダメだねと彼に思う部分もあった。(続く)2024/10/13
フリウリ
11
「オブローモフ」のうちの一章である「オブローモフの夢」の全訳のほか、全体の抄訳、さらに丁寧な解説から成り立っています。なぜ「オブローモフ主義/オブローモフ病」がロシアのみならず世界で注目されたのか、なぜ通訳として世界を巡っていた作者ゴンチャロフが怠惰な「オブローモフ」にこだわったのか、などについて解説されています。ベケットはオブローモフのファンで、「ゴドー」を書く前に読んでいたそうです。小島信夫「私の作家遍歴」、後藤明生「40歳のオブローモフ」も気にしています。1849(1859)年刊。82024/06/14
Ex libris 毒餃子
10
ロシア文学に燦然と輝く『オブローモフ』の抄訳。本編はクソ長いからこれを読んで概略掴んでおこう。2024/07/20
ががが
9
『オブローモフ』の抄訳と本編の土台を成し、単体としても発表された『オブローモフの夢』の訳。怠惰で無気力なオブローモフは、あくせく働く人たちを傍観しながら、こんなのは人生じゃないと言い、幼年時代を夢想する。そこには素朴で牧歌的な田園の生活が描かれ、彼の理想が現出している。西洋的な進歩や社会の変革といった「立派そうなこと」を拒絶し、ひたすら素朴で平安な日々を望むオブローモフは、ロシア人の精神性を体現した人物として描かれているようだが、子供時代を懐かしみながらも社会に忙殺される私たちにも十分訴えるものがある。2025/02/07