内容説明
摂関政治から院政への橋渡し役をはからずも演じた、道長の子・藤原能信。藤原摂関家と天皇家を中心に、皇子誕生をめぐる閨閥(けいばつ)による権力抗争を、道長の背中を追いながら王朝社会の陰の実力者となった能信を通して描いた歴史大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
96
大河ドラマ「光る君へ」のその後が気になってこちらを読んでみた。本作の主人公は道長の四男・能信。彼はある意味、父親が極めた摂関政治の行く末を変えることになる。側室の高松系ゆえか、本妻筋(鷹司系)の頼通らに比べて昇進で後れを取り、一家三后の中心となる鷹司系、一方の高松系の不条理な立場に彼は反骨心を持つ。禎子との出会いから生じた平安朝の新たな潮流は陰に追いやられながらも、運が味方し本流へ。それは摂関家の権謀の滑稽さを皮肉るかのよう。東宮指名の大一番は彼を道長から解放させたのか。能信の妻が終盤いい味を出していた。2024/12/12
がらくたどん
68
読書家様からリベンジ再読のキッカケを頂いた因縁の(笑)永井さんの王朝三部作、ついに完読!いや~めでたい。藤原氏は斜陽に向かいますがそんなん知ったこっちゃない♪ただただ、読めて嬉しい♪ラストを飾るのは例の「風の精」浮世離れした高松殿明子の三男能信の見事な「渇望人生」。倫子側の異母兄弟に出世では水を開けられ妹達の処遇も見劣りするという焦燥と不満の日々。彼は鳴り物入りで三条帝に入内した道長の次女妍子が産んだ「不運の種子」禎子内親王を敢えて推そうと決める。藤原氏が辿る下り坂、能信の望みは叶ったと言えるのかしらね?2024/10/24
NORI
25
読み友さん紹介本。藤原道長の四男・藤原能信が主人公という、マニアックな所を突いた一作。絶対的権力者の子でありながら、道長の第二夫人・明子の子という微妙な立場であるがために、異母兄弟(正妻・倫子の子)から一歩下のポジションを余儀なくされる。それだからこそ見えてくる、人々の迷いや苦悩や妥協。 道長を描いた同著者「この世をば」のサイドストーリー的な歴史小説。人間生まれながらにして不平等。自分に与えられた能力・環境の中で、いかに人生を最適化するか。それは古代でも現代でも変わらない。その中で望むモノとは。2024/12/08
本のロマンス
24
主人公の「藤原能信」は道長の四男。されど、傍流の高松系であるが故、裏街道での歩みを余儀なくされます。その能信の「望むものは何か」、 本書のテーマですが、それは結局のところ、道長・頼通らと同様に「出世と権力」であると読み解きました。裏街道からの権力闘争ならではの手練手管や、裏街道に伴う悲哀や屈折した心理が厚く描き込まれ、史実の列挙に止まらない面白さがありました。2024/11/15
鐵太郎
20
藤原能信(ふじわら の よしのぶ 995-1065)とは、平安時代の上流貴族。藤原道長の四男として一部にしか知られていなかった男を作者は〝平安朝三部作〟の掉尾の主人公に据えました。この人は、道長の妻たちの上位の二人のうち、鷹司殿と呼ばれた倫子の方ではなく高松殿の明子の子で、そのため出世が鷹司殿系より遅れ、ほぼ一生かけて挽回しようとした人なのだそうな。自分の娘を天皇・東宮などに入内させ、皇子を産ませ、それが次の天皇になることが勝利であるこの時代はつまり「女の股を覗く」こと。彼はそのためにどう生きたのか。2025/04/13
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