内容説明
家業の理髪店で理髪師として出発し、石田波郷門下で句作の道へ。その後、横光利一に師事して小説を書き始め、55年に本書が直木賞候補作となる。選考会では小島政二郎から「ホンモノのリズムが打っている」と絶賛されるが、他の選考委員から「エッセイではないか」「自然すぎる」と批判され、落選。しかしその文章が放つ独特なユーモアと哀感が多くの読者を魅了しつづけ、「名文家」として根強いファンを持つ。「氏の筆の巧妙な幻術に引っかかって(中略)一々事実であると鵜呑みにしないよう」(山本健吉「跋」)ご用心のうえ、この「不世出の作家」が編み出す小説の醍醐味をご堪能あれ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
34
何の予備知識もなく石川桂郎の作品に接すると、一見「貧乏と酒をネタにして風流な世界をユーモアとペーソスで描いた私小説」とか「日常の一コマを巧みな文章で切り取った随筆」と受け止められかねない。しかし山本健吉の跋や富岡幸一郎の解説を読んでその作品に対する評価はぐるりと変わる。それは現実の事実に幾分かの嘘をまぶして作った話ではない。むしろ現実を虚構によって反転させて、そのまやかしの中に普遍的な真実を描写する骨法であった。元手となったのは、一つには剃刀名人としての職人気質であり、もう一つには俳人としての視線である。2025/06/30
hirayama46
6
はじめての石川桂郎。いかにも本当のことを書いていそうな筆致でフィクションを織り交ぜる、幻惑的私小説……とはいえ、そもそも私小説というジャンルそのものが虚実のあわいをいくものな気もします。なので、あまり重々しく構えずに軽やかな文体を楽しむのが吉だと思われます。2025/03/25
小谷野敦
5
あまり知られていない俳人の小説・随筆の集成で、意義はあるが、解説の富岡幸一郎が不世出の作家みたいに大騒ぎしていて白ける。それに文藝文庫の価値の一つである年譜がついていないのは大いなる手抜きではないか2024/08/12
でろり~ん
4
そうですね。解説で言っているように、なんでこの作者がそんなに知られていないのはふしぎです。正直に嘘をつく、って感じなんでしょうか。凄くイイ一冊でした。けどね、講談社さん、文庫本一冊2000円は高すぎまっせ!2024/07/03
頭痛い子
3
川上未映子さんが旅のお供にコレと言って紹介していた本(Instaのストーリー)。価格が文庫なのに2000円近くするので、だいぶ躊躇ったんだけど、中身はめちゃくちゃ面白かった。なかなか文中に「◯◯であった。糞っ!」「〜塩梅なパッション」なんて書く文士、いないよねぇ。初めて会ったよ。表題の「妻の温泉」、最後のほうの花籠や蜉蝣も、めちゃくちゃくちゃ練られている文章で良かった。スラスラっと読めば、引っかかりはない、何気ない文章だとは思うのだけど。2024/10/29
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