内容説明
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家・萬(よろず)春(はる)。少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。一人の天才をめぐる傑作長編小説。 【電子書籍版には紙書籍版に収録されている「パラパラ漫画」と書き下ろし番外編二次元コードは付きません】
目次
I 跳ねる/II 芽吹く/III 湧き出す/IV 春になる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
648
4つの章から成り、それぞれダンサーのJUN、叔父の稔、作曲家の七瀬が、そして最後の章はHAL自身が語る。みんなが語っているのは稀代のバレー・ダンサーであり、振り付け師でもあったHALについてである。この語りの手法はHALを多角的に浮かび上がらせ、またその造型を立体化させることでも大いに成功しているだろう。ただ、最終章のHAL自身の語りは種明かしめいてしまい、ここも別の誰かが語った方がよかったのではないかと思われる。それにしても、よくこれだけバレーに精通したものだと感心する。とりわけコンテンポラリーの持つ⇒2025/04/03
パトラッシュ
545
HALは天才バレエダンサーであると同時に、周囲を惹きつけてやまない巨大な光源であり鏡だった。誰もが振り返る輝きを放つ彼に、最高の姿で映りたいと願ってやまない。だからダンサーは自分を最高に表現する形として彼に振付を頼むが、己も知らなかった新たな側面を映されて戦慄してしまうのだ。HALに接した平地の民は、彼が天高く舞い上がるのに引きずられて才能を飛翔させていく。芸術家の孤独が描かれた従来型とは逆に、バレエという共通言語を持つ狭い世界故に成立する、集団としての芸術家の成長を主題とした新たな教養小説となっている。2024/04/23
starbro
543
恩田 陸は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、「蜜蜂と遠雷」&「チョコレートコスモス」の系統、今回のテーマは、バレエです。バレエの神に魅せられたアンドロギュノス、萬(よろず)春の物語でした。長編ですが、連作短編集のようなイメージ、色んな要素を盛り込んだせいか散漫な感じで、戦慄は走りませんでした。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/spring/2024/05/14
読特
432
アンデルセンの異色童話「ある母親の物語」。ゲイと青年革命家が監房で同室する「蜘蛛女のキス」。初演の聴衆の反応が”暴動”と呼ばれた「春の祭典」。前と後ろに反対向きの2つの顔を持つ「ヤヌス」。暗殺者「アサシン」…ダンサーとして抜きん出て、振付家として大成する天才を4つの視点で語らせる。著者が自身の趣味を全開させながら、物語としても楽しませる。本書に偶然出会わなければ、バレエの世界に興味を持つことなどなかったろう。知ることで目の前が劇的に変わったわけではないけれども、昨日とほんの少しだけ違う今日があるようだ。2024/12/01
まちゃ
394
バレエの神に愛でられ、ギフテッドとして、その才能を開花させていくバレエダンサーにして振付家、萬春の物語。若かりしときから共にバレエの道を歩んだ深津純、叔父の稔さん、幼い頃からの既知の仲で作曲家となった滝澤七瀬、そしてハル自身。多面的な視点から描かれたハルの人生とバレエの魅力。バレエの動きが言葉で文章で、ダイナミックに美しく描かれていました。良かったです。2025/04/26
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