内容説明
〈 人が人への信頼を失ったら、その先には何が残るっていうの? 〉
洗練された文体と神秘的なスタイルで注目される韓国文学の新鋭による短編集。
夢と現実が交差する迷路のような物語は、私たちの目を世界の本質へと向ける。
共生の感覚を回復させる魅惑的な8つの物語。
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「わからないかな?これが普通なんだという確信、もしくはこれが普通であるべきだと信じて疑わないこと、それこそが本当の「悪」なんだよ」
マイノリティへの憎悪やネットヘイトに満ちた世界を生きる今。
「人が人を助けねば」という現代社会に求められる声に耳をすました小説集。
洗練された文体で描く幻想的な物語をとおして、良かれと思った〝優しさ〟が往々にして他者を傷つける〝独善〟になってしまうような、現実世界の複雑さを見つめていく。
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【目次】
・あなたのいた風景の神と眠らぬ巨人
・アリス、アリスと呼べば
・海辺の迷路
・夜の潜泳
・チャンモ
・人が人を助けねば
・夜は輝く一つの石
・メゾと近似
・あとがき
・訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
12
現実と夢など仮想世界をゆききする作品が多い。2025/01/30
フランソワーズ
5
「人の頭や心の中で起きることは現実の世界とつながっているのかもしれない」。作中で幾人かの登場人物の視点を変えることを恐れず、時間・場所さえも自由に飛び越える。そこで描かれるものは、暗示としての点と結果としての点。その不可思議な相関の線上でたゆとう人々。運命と言ってしまえばそれまでのものを、独創的な手法で構築してゆく。お気に入りは表題作と、『チャンモ』、『メゾと近似』です。2024/05/31
takenoko
3
8つの短編を収録。いまの時代の様々な問題を織り込んだ話。他者の視点で考えることの必要性を思う2024/08/30
nightowl
3
生きることの辛さを繊細な文体(訳文?)で表現する韓国文学の中で新星登場。良識をフィクションの形で哲学的に問い掛ける。人間の長年にわたる穏やかな繁栄を考慮するより我欲に満ちた人々のなんと多いことか。冒頭「あなたのいた風景の神と見知らぬ巨人」から切々と願いを込めた言葉が続き、逸材ぶりに舌を巻く。"キレやすい"人への慈しみ「チャンモ」も目を背けがちなテーマについて正面から向き合っている。社会へのやんわりとしたメッセージに好感。後は個人の歴史におけるifストーリーもお好きと見た。事前情報無しで読んだので混乱。2024/05/12
ishida
3
まるで映画を観ているようだった。良著2024/05/03