内容説明
それは「家族」と呼ばれるのだろうか。ユダヤ人の夫。日本人の妻。ペルーからきた赤ん坊。異なる三つの旅券をもった男と女が、子どもと大人が、アメリカの小さな町で一つの「チーム」を組んで暮らしはじめた──。
著者が移り住んだアメリカのさまざまな町で書き綴られた、さりげなくも感動的な暮らしのスケッチ集。1984年刊行の名エッセイ集、待望の新装復刊。
解説:榎本空。
「ヤエルはほっそりした長いからだをして、わたしたちのところへきた。生まれた三日目だった。/生まれたてのみどり児はまるまると肥ってはおらず、手や脚に多くの皺がある。見えないはずの目を大きく見開いて、じっとある一点に焦点を合わせているように見えたりする。それがひどく真剣なまなざしで、「これからはあなたもまじめに生きるんですよ」と、わたしに伝えようとしているのかしらと思ってしまう。」(本文より)
【目次】
■ペルーからきた私の娘
■ウィラード盲目病棟
白樺病棟の「高砂」
かげりもない、ペネイの夜ふけに
ボランティアたちの晩餐会
スパゲティかぼちゃ
夢
オムライス
ヘンリーの運勢判断せんべい
■鯨が生んだ鱒
『アメリカの鱒釣り』の表紙の町
『アメリカの鱒釣り』の表紙の男
はじまりとおわり
連続と不連続
一すじの黒髪と紙屑籠
ペンキ塗るひと
たましいの遺産
あとがき
解説 聞くことと聞けぬこと、その奇蹟について 榎本空
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Karl Heintz Schneider
24
ユダヤ人の夫、日本人の妻、ペルーから来た赤ん坊。異なる旅券を持った子供と大人がアメリカの小さな町で一つのチームを組んで暮らし始めた。おおっ!これは面白そうと思って飛びついたのだが小説かと思ってたら、まさかのエッセイ。施設に預けられていた生後3日目の女児を養子にし言葉もわからないペルーで家族三人でつつましく生きていく物語。「うつくしいこども、天のヤエル」そう呼び我が子を慈しむ著者。本書は1984年に書かれたものの改装版。第一章が表題作で、第二話・第三話は無関係。正直、ヤエルのその後を読みたかった。2024/08/09
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
22
それは「家族」と呼ばれるのだろうか。ユダヤ人の夫。日本人の妻。ペルーからきた赤ん坊。異なる三つの旅券を持った男と女が、子どもと大人が、アメリカの小さな町で一つの「チーム」を組んで暮らしはじめた。という紹介文に惹かれててっきり家族の物語かと期待したのに!残念ながら「私の娘」についてページは多く割かれていず、ブローティガンの翻訳者として「アメリカの鱒釣り」に触れられた部分が多かった。なんだろう、この時代の空気が臭ってくる感じ。懐かしい。彼の地に腰をおろすでなくとも、アメリカから押し寄せたものに心身を蹂躙され↓2025/03/04
えりまき
16
2024(158)図書館の新刊コーナーで出会った本。「それは『家族』と呼ばれるのだろうか。ユダヤ人の夫。日本人の妻。ペルーからきた赤ん坊。」に惹かれました。読み始めて1984年のエッセイと気づき驚きました!現在のヤエルさんのことが知りたいです。精神病院でのボランティア。「精神病院での生活六十年。そして視覚障害。日本人。」。このような生活を送っている方がいらっしゃるとは知らずショック。アメリカへの中国からの女性の移民禁止法(1924年)や異種族混交結婚禁止法(1947年)にもショックです。 2024/06/09
よしじ乃輔
11
タイトルとなったペルーの赤ん坊との話よりも、「ウィラード盲目病棟」で出会った盲目の老人の話が印象が強すぎて。英語が話せなかったであろうことから、精神病院へ何十年と暮らした日本人のその人は、何を思いどう生きたのか誰にも何も話さず著者と出会い亡くなった。どんな人生だったのか。聞き書きのエッセイの名手と言われる翻訳者でもある著者。いつか翻訳作品も読んでみたいと思う。2024/11/29
樽
9
海外文学を翻訳で読むということは、半分は翻訳者の作品を読んでいるのだと割り切ってはいる。が、その翻訳者自身の作品が好きであることは、幸福なことだ。この作家を翻訳者としてしか味わったことがなかったのがもったいない。2024/07/23
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