創元推理文庫<br> ガラスの顔

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創元推理文庫
ガラスの顔

  • ISBN:9784488151102

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内容説明

迷路のような地下都市カヴェルナの人々は自分の表情をもたず、《面(おも)》と呼ばれる作られた表情を教わる。そんなカヴェルナに住むチーズ造りの親方が、トンネルで痩せこけた幼子を見つけた。ネヴァフェルと名づけられた幼子は、ある理由から外の世界から隠されて育てられる。一瞬たりともじっとしていられない好奇心いっぱいの少女に成長したネヴァフェルは、ある日トンネルを抜けだし街に出てしまい、そこで奇しくも国全体を揺るがす陰謀のただ中に放り込まれるが……。『嘘の木』の著者が描く、健気な少女が大活躍する冒険譚。カーネギー賞候補作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Shun

34
ハーディングの幻想小説。世界観は重厚なファンタジーで、閉塞感のある社会に突如放り込まれた異端の少女がやがて世界を変革していく冒険小説のようでもある。そして本作において最も特質な設定というのが、地下世界に住む人々の”表情”が僅かな種類の<面(おも)>しか身に着けてはならないという通念にあります。地上世界に比べ環境も資源も乏しい国の秩序と統治の為に、低階級の市民たちは表情という自然な意思表示すら抑圧され歯車のような存在として描かれている。そして記憶を失った赤毛の幼子の成長でやがて世界の秘密が明かされていく。2024/06/30

Kotaro Nagai

12
ハーディング4冊目。2012年長編第5作。この後に書かれたのが「カッコーの歌」(2014)になります。これまで読んだハーディングの作品は、主人公は10代の少女で厳しい環境に置かれながら勇気と機転で切り開いていくストーリーですが、本作もそのフォーマットになります。今回は架空の地下都市カヴェルナを舞台としたファンタジー作品。ヒロインは12歳のネヴァフェル。ルイス・キャロル(ウサギを追って冒険が始まる)やトールキンらの英国ファンタジーの伝統を感じさせる作品。ラストのエピローグで視点が180度変わるのが鮮やか。2025/06/05

nori

9
『とんでもファンタジー』。地下トンネル都市カヴェルナの人々は面と呼ばれる幾つかの表情を会得するのみ。階級社会であり、歯車として働き続ける労働者達は辛くても苦しくても怒りの表情も哀しみの表情も持たない。突然チーズ造り匠のトンネルに落ちて来た幼女はネヴァファルと名付けられ、宮廷を嫌悪する頑なな親方に育てられた。不思議な事に彼女は一瞬たりと落ち着かず、クルクルと変わる表情豊かで好奇心旺盛な少女に育った。そして勇敢にカヴェルナ社会の闇と陰謀と闘う。表情創りファッションやら、秘薬ワインの匠やらよう考えつくモノだぁ2025/07/01

チョコレートコスモス

7
一言では表せない複雑さを持っているストーリーだ。本作は、地下世界と、人々は表情を持たず「面(おも)」と呼ばれる仮面を付けて過ごすというところが特徴的な物語だ。そんな世界で、心の内が素直に表情に現れるネヴァフェルという女の子が、他の人と異なる自分がなぜここで存在しているのかを追い求める中で地下世界の争いに巻き込まれていく。私が気に入っている一文は、「辛辣な言葉はどんどん独創的になって…」だ。主人公が信頼している少年が文句を言っている様子についての文だが、少年の愛すべき人柄を表しているなと微笑ましく思う。2025/07/12

りふりヴ

6
終盤にかけての怒涛の伏線回収 表情が無い下層階級の少年、策略に塗れた上流階級の少女、それでも通じ合える友情が輝いている2024/08/21

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