内容説明
フィンランドの「童話の女王」アンニ・スヴァンの作品集.民話的なファンタジーと,現実の風景や暮らしを融合させた童話は,およそ百年前から人びとに親しまれてきました.春をむかえにいくお話,妖精や魔物の登場するお話,ドラマチックな愛のお語など,色とりどりの13編をえりすぐり,美しい挿絵とともに紹介します.
目次
お話のかご
山のペイッコと牛飼いのむすめ
森のクリスマス・イブ
小さなヴァイオリン
小鳥はうたう
波のひみつ
子牛のピエニッキと森のこびと
春をむかえにいった三人の子どもたち
ふしぎの花
氷の花
夏のサンタクロース
少女と死の影
山の王の息子
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
47
フィンランドの作家による昔話風の話11編。山のペイッコ(トロルのようなもの?)や森のヒーシ、氷の精や山の精など、たくさんの妖精たちが登場する話はなかなか怖いが、それだけフィンランドの自然が厳しいということなのだろう。「春をむかえにいった三人の子どもたち」は、当時のフィンランド情勢を風刺した話で、春を妖精の子どもたちの懇願に対する返答がなかなか手厳しい。2025/07/29
ぶんこ
45
フィンランドという国の深い哀しみを感じる。スウェーデンに約600年も統治された事で、今でも支配階級はスウェーデン語を、庶民はフィンランド語を使う。アンニはフィンランド語で書くことで、児童文学の基礎を築き上げました。この物語が書かれた年はロシアの支配下におかれていました。後書に、「生きるうえで避けられない痛みや悲しみも引き受けなくてはならない。誰も代わってはくれず、生きてゆくのは自分自身。生ある者が向き合う真実を、美しい物語のかたちであたたかく描いている」本の感想ではないが、書かずにはいられませんでした。2024/12/31
Roko
27
冬が長いフィンランドだから、雪と氷の話が多いし、春を待ちわびるという気持ちが強いのです。森に住む動物たちや妖精たちと共生する人間の暮らしは、どんなに便利な時代になっても忘れてはいけないことだなと感じました。 ルドルフ・コイヴが描いた挿絵が、とても繊細で、物語の世界感をとてもよく伝えています。こういう所も、フィンランドらしさなのでしょうね。#岩波少年文庫100冊マラソン2025/07/26
かもめ通信
24
収録されている十三篇のうち、とりわけ私のお気に入りは、「波のひみつ」「春をむかえにいった三人の子どもたち」「氷の花」。選んでからもう一度読み返してみて思うに、このセレクトには、ちょうど今、私が暮らす北国が、根雪が溶け始め、オオハクチョウが飛来して、ひときわ春が待ち遠しい季節だということが影響しているかもしれない。 夏に読み返したらまた違った作品に心惹かれるかも、そんな期待をしつつ、ひとまず本を閉じた。2024/03/28
mahiro
20
フィンランドの女性作家による童話集。創作ではあるがフィンランドの風土や昔話や人々の暮らしが伝わってくるような佳品。ペイッコ、ヒーシなど森の奥に住む魔物の呼び方も独特だし森の木々はトウヒやエゾノウワズミザクラなど北方の植生で、サンタクロースは魔法のブーツで野山を駆ける。子牛のピエニッキと仲良しの森の小人の話や、少し不気味な山の王の息子の話などが好きだ、 同じ北欧でもノルウェーやスエーデンの雰囲気とも又趣が違う。2023/12/27