内容説明
市場化による公立学校の序列化と教育格差の拡大.規制緩和で使い捨て労働者と化す教員.企業が公教育をターゲットにあらゆる領域で肥え太っていく――.新自由主義の極限にあるアメリカの現実とは.そしてPISAに見られる教育の数値化・標準化の危険性とは.ニューヨーク在住の気鋭の研究者が,近未来の日本に警鐘を鳴らす.
目次
はじめに──日本人が知らないアメリカの教育の闇
第1章 教育を市場化した新自由主義改革
第2章 企業の企業による企業のための教育改革
第3章 市場型学校選択制と失われゆく「公」教育
第4章 発展途上国からの「教員輸入」と使い捨て教員
第5章 PISAと教育の数値化、標準化、そして商品化
第6章 アメリカのゼロ・トレランスと教育の特権化
第7章 アカウンタビリティという新自由主義的な「責任」の形
第8章 「プロ教師」育成の落とし穴──「生かす」というパラダイムシフト
第9章 シカゴ教員組合ストライキ──組合改革から公教育の「公」を取り戻す市民運動へ
第10章 立ち上がったアメリカの人々
おわりに──三人の先生
あとがき
注
キーワード(電子版付録)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
471
わたし自身、一応「中の人」なのだが、本書はNYという地域中心で、あまりピンと来る内容ではなかった。論文などを英語で書き慣れていらっしゃるせいか、読みにくい部分も。試験の成績だけで教師が判断されるというのは、あっちゃならないことだと思うけれど、分かり易い指針であることは間違いない。我が校で言えば、オンタイム卒業者率とか校長はピリピリしてるしな。各種到達率はオンラインで見られるので、我が家が家を買う時にはそれを最優先したことを覚えている。結局そういうことだ。2021/01/02
ハッシー
91
★★★★☆ 経済格差を再生産するアメリカの新自由主義教育改革を積極的に導入しようとしている日本に警告を鳴らすレポート。教育界にこのような志をもった方がいるのは素晴らしいことだと思う。印象に残った言葉:「プロの仕事は、素人にはわからないからプロなんだ」「主張の裏付けを数字に頼るということは、最終権限を他人に委ねることである」「教育的に大事で測ることが困難だったものは、大事でないが測定し易いものと置き換えられてしまった。だから今、我々は学ぶ価値のないものをどれだけ上手に教えたかを測定しているのだ」2019/03/07
山口透析鉄
23
これも市の図書館本で。先日の文化放送・大竹まことのゴールデンラジオに著者が出ていたので、まずは以前の本を読みました。 学力テストや学校運営組織等、いわゆる新自由主義的な対応では率直に言って良くなるはずもないです。テスト関係で儲けるピアソン社(教育利権でしょうか)、PISAのそもそもの限界と数字への盲信みたいなもの、日本も他人事ではないっぽいです。実際は学校を選べるかといえばそれも幻想で、教育格差は広がっています。 如何なる抵抗を抑圧し得る賢い方法は議論の範囲を制限し、その中で活気ある議論を奨励することだ↓2024/11/25
mazda
22
新自由主義のなれの果てを実践しているアメリカでは、もはや公共教育までが競争の中にあり、テストのスコアで順列をつけ、場合によっては学校をなくすことが起きています。いい学校が集まるのは当然収益の多い都心部で、お金持ちしか通えないことでさらに格差を生みます。判定に使われるテストももちろん企業が作成するので、税金から会社に大きなお金が流れます。それも、テストに宣伝が入ってくるので、「Aさんは3ドルのビッグマックを2つ買いました。いくらで払いましたか?」という類の問題が出ている、という恐ろしい状況です。2018/11/16
りょうみや
12
とても良い内容。アメリカの教育界は新自由主義、経済的効率化の弊害が全て凝縮されているかのよう。喰い物にされる貧困層の子ども達が気の毒でならない。現状のレポのみならず、著者自身と他の教育学者の教育学の考えが随所に述べられておりとても響くものがある。教育とは、教師の役割とはと深く考えさせられる。一番印象深いのは数値化や標準化することは、物事を見通しよく考え比較するために便利であるが、間違えれば数値化することが難しい大事なものを見落とし、教育=共通テストの点数のようにその間違いが独り歩きすることの危うさである。2016/11/23
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