内容説明
二〇二四年の米大統領選に、トランプが帰ってくる。前回選挙の敗北を受け入れず、司法当局の追及も受ける男に、なぜ国民は再び熱狂するのか。国外から見れば不可解な現象も、支持者の声にじっくりと耳を傾けると、その正体が浮かび上がる。トランプ支持には相応の論理があり、共感を呼ぶものも少なくない。選挙が終わっても国民を分断する価値観の衝突は終わらない。アメリカの「今」を解き明かす第一級レポート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるき
9
アメリカ国民が彼を選んだわけですが、そうなる過程と土壌が大変興味深い。対岸の火事ではなく、日本にも燻る何かを考えずにいられません。 2025/06/13
Hatann
8
分断が懸念されるアメリカにおいて、トランプ支持者へのインタビューを通じて、支持の深層を炙り出す。既存マスメディアが自分たちの声を取り上げないという不信が、信頼性の係数ゼロの脳内変換に繋がり、自分たちにフィットしない情報をフェイクと断罪し、被害者意識に基づくナラティブを醸成する。トランプを救世主として祭り上げ、様々な論点を「敵か、味方か」という単純な思考で断罪する。本来、民主主義の要諦は、多様なナラティブを並べて、相違を認識しながら、相互に排除するのではなく、現実的な妥協を通じて物事を進めていくことにある。2024/12/13
koishikawa85
6
ちょっと繰り返しが多い気はしたが、アメリカの現状についてオーソドックスにまとめた本。すでに聞いたような話も多いが、ピンクスライムジャーナリズムというのは初耳だった。地方紙の名を騙り、現地にはいない記者がコタツ記事を書くオンライン媒体らしい。日本はこうなってほしくない。2025/01/03
とろりんとう
6
2024/11/02日経新聞書評本。NHK記者が見たトランプ支持の実情と米国の分断。トランプ再選が決定する直前から読み始めた。係数ゼロ、選管を含む公的機関への信頼低下、被害者ナラティブがトランプ支持に影響。起訴の件も係数ゼロにて事実が意味をなさない。事実がどうかは関係なく、リベラル派を止める方が重要。トランプの巧みな話術、リベラル派の行き過ぎたポリティカル・コレクトネスやジェンダー、更にメディアの経営難と信頼低下(報道バイアス等)が拍車を掛ける。共和党派と民主党派の歩み寄りもなく、分断を深め、米国は混迷。2024/11/15
みじんこ
5
トランプが支持を集め続けている理由を、取材による社会の分断とメディアとの関わりから読み解く。教育現場と禁書の話は初めて知った。不正選挙だと信じる人がなぜこうも多いのかも疑問だったが、公的機関への信頼度の低さ等を踏まえると理屈としては分かる。「まず人々の立場があらかじめあり、その立場を守り、正当化するための主張や言説を信じる」という記述が最も的を射ている。保守とリベラルの分断は根深いが、人間として一致できる部分の方が多いとする論には希望が持てる。併せて述べられているように、世代交代が現実的な解決法に思える。2024/08/25