内容説明
鳴り響くアメリカ国歌、銃声。逃げ惑う住民が辿りついたのは元大統領邸宅(モンティチェロ)だった……。近未来アメリカを舞台に、トマス・ジェファーソンと奴隷の間に生まれた女性を先祖に持つ女子学生が、暴徒化した白人至上主義者から逃れ、因縁の場所で運命と対峙する表題作をはじめ、全6編を収録したデビュー作品集。
バージニア州シャーロッツビル周辺を主な舞台に、人種差別や経済格差の問題等、さまざまなテーマを内包する中編(表題作)1本と短編5本を収録。
本書は、全米批評家協会賞ジョン・レナード賞最終候補、ニューヨーク・タイムズ紙2021年ベストフィクション10冊に挙げられた。2022年リリアン・スミス図書賞受賞。
(原題 My Monticello)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
59
表題作の中篇と短篇5作収録。人種差別や経済格差などをテーマとしている。巻頭の『コントロール・ニグロ』は黒人視点での黒人観察か、かなり強烈。『モンティチェロ終末の町で』は近代アメリカを描いた作品。トマスジェファーソンと黒人奴隷の間に生まれた女性、その子孫の女子大学生が主人公。白人至上主義者たちの暴動から逃れての生活を綴っている。連日、ウクライナ侵攻やガザの様子を観る現在においてこの作品がフィクションと思えないところが怖い。【2022年リリアン・スミス図書賞】受賞2024/06/12
ヘラジカ
51
表題の「モンティチェロ」、この作品がセンセーショナルに感じられないことこそ一番の衝撃であると言っても良い。リディア・ミレットの大傑作『子供たちの聖書』を読んだときにも感じたが、過去や現在、そして可能性の発露である「物語」も、ここまで現実との距離が近いと恐怖よりもなんとなく納得感のようなものが先に立つ。結末の巧さがこの中篇の全てだろう。ディストピアという言葉から想起される”隔たり”とは無縁のリアルな秀作。冒頭の「コントロール・ニグロ」も短篇として文句なしの傑作。デビュー作とのことでこれからが非常に楽しみだ。2024/05/08
星落秋風五丈原
19
表題作は米国初代大統領に黒人の愛人がいた史実をもとにしている。コントロール・ニグロは空恐ろしい計画である。2025/03/02
ori
14
「コントロールニグロ」ヒタヒタ怖いー。真剣さ加減と狂ってる加減が絶妙の混ざり具合。しかし怖いと思う私は白人側の目線になってるのかもしれないとも思う。 本当に怖いのは「モンティチェロ 終末の町で」の方で、これは今回のトランプ政権が発足してからものすごい勢いで変わっていくアメリカの現状を見ているとすぐにでも現実に起こりそうな怖さ。2025/03/11
おだまん
14
近代アメリカの人種差別のディストピア。歴史的な背景を「母を失うこと」で学んだばかりなので移民側のもう一つの歴史として衝撃を受けずにはいられない。モンティチェロについてはかなりリアリティのある設定のようで詳しい方にはその辺も楽しめるのかも。短編もよかったです。2024/07/20
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