筑摩選書<br> 岩波書店の時代から ――近代思想の終着点で

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筑摩選書
岩波書店の時代から ――近代思想の終着点で

  • ISBN:9784480017963

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内容説明

1960年代からポストモダンの時代を通じ岩波書店で多彩な出版活動を展開した大塚信一に、同じく編集者だった堀切和雅が問う――脱魔術化され、人間の精神が寄る辺をなくした近代において学問や芸術は何と格闘してきたのか。河合隼雄・中村雄二郎・大江健三郎・山口昌男・宇沢弘文・木田元・磯崎新らとの仕事を組織しつつ、何を理解しようとしてきたのか。近代の思考もまた新手の魔術だったのではないか。我々はなぜ地球的破局に向かう終着点にいるのか――人類の思想史を対話でたどる。 【目次】はじめに 堀切和雅/第1章 「敗戦」のアンビバレンス/第2章 「近代」という問題群をまるごと問う/第3章 日本近世・準備された逆説/第4章 言語と「場」、そして意識/第5章 「主体」の観念、以前/第6章 「心」──変性するもの/第7章 ポストモダン思想の淵源/第8章 リアリズム・ニヒリズム・ファンタジー/第9章 トポスと人物/第10章 思考空間としての社会/第11章 「場所」から考える/第12章 脱魔術化と再魔術化/第13章 生・ロマン・崇高/終章 いま、破局に至るのか/あとがき 大塚信一/人名索引

目次

はじめに──あとからわかったことといまわかろうとしていること 堀切和雅/第1章 「敗戦」のアンビバレンス/生きてきた歴史から生じる感覚/少年の世界に「アメリカ」が出現する/「時局」とデタッチメント/「あらし」の前とあと/第2章 「近代」という問題群をまるごと問う/「明治一五〇年」の国で/フィクション──不可視の過去から「ずっとあったもの」/「水戸黄門」が漫遊し遍在する国/「シビルミニマム」の先が見えない/「新しい公共」「居場所と出番」「ゆとり教育」それはポストモダンであるはずだった/日本の近代史を通じて、途切れずあること/転がり落ちて、こんどは何を目指していくのか/第3章 日本近世・準備された逆説/江戸期のイメージがひっくり返る/ポストモダン思想の背後に覗く「ロシア」/近世日本の高度なリテラシー/「明治」が多様性を圧し潰す/合理と力のための、非合理な天皇/象徴という捷径/人が育つことと「ランドスケープ」/第4章 言語と「場」、そして意識/言語は「モノ」か「コト」か?/ホッブズ、ロック、ルソーという「順番」/国語とは、陸海軍付きの方言である/「想像の共同体」の「ウチ」と「ソト」/時代の空気が「すり替わった」/リズムと共感/デカルトと反デカルト、そして西田幾多郎/心の多様性を探る/天国への扉/第5章 「主体」の観念、以前/モラルと人格の起源/ユング的思考/暗い時代の明るい絵/個人というものがある、「かのように」/残響する「古代」と「死者」/歴史的に新しい問題と人文学/知的な中間層というのは容易く吹っ飛ばされた/第6章 「心」──変性するもの/時代と場所と「事実」/流れから脱落していればこそ/欠如が教える全体性/生命と「原初の設定」/思考のトポスとトピックス/第7章 ポストモダン思想の淵源/ロマーン・ヤコブソン/ロシアから出現した理論/右脳はものごとを名付けない/無意識と「未開」の発見/第8章 リアリズム・ニヒリズム・ファンタジー/「目を嵌め込む」/ニヒリズムのさまざまな帰結/近代とは人間が機械に恋してしまった時代/災害をつくり出す社会/第9章 トポスと人物/マスはいつでもモッブになる/河合隼雄の登場/世界の見方を選択する/物語という宇宙/「速い・大量・正確」の時代に/形式──想像と創造の守り/集中と計量の時代はなぜ終わらない?/「ジャングルの掟」への自壊/第10章 思考空間としての社会/学の社会化/市民とは自らをつくるもの/自治の観点から憲法を読めば/「私的所有」はそれほど安心ではない/「啓蒙」の限界と、トポスの力/生きて考える基盤──社会的共通資本/第11章 「場所」から考える/ポストモダン流行のころ/最も重い問い/すべては「場所」で がる/場所、述語的世界、中動態、古論理/第12章 脱魔術化と再魔術化/ハイデガーと「反哲学」/坩堝──一九世紀末ウィーン/主客の分かちがたさ──現象学/説明する自然観と、「成る」自然観/神話・近代化・ファシズム/第13章 生・ロマン・崇高/「崇高」は善悪を超える/「何もない」ことの果てしなさ/抽象と土着、金銭と血/近代の消失点/終章 いま、破局に至るのか/人格概念の後退/亡霊のごとく、いつでも/すでにもうおそいのかもしれない/わが上なる星空と、わが内なる道徳律/ごく地味なる小宇宙/あとがき 大塚信一/人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おおにし

17
タイトルから岩波書店の社史のようなものかと思ったら、岩波の編集者の先輩と後輩の対談であった。先輩の大塚氏は岩波書店の社長も歴任した人。対談の内容はポストモダンの黎明期から失われた30年の日本の思想史の振り返るもので、思い出話の雑談かと思って読んだら結構面白かった。人間の主体性を語る際には「時代」と「場所(トポス)」という観点で事実を読み解く必要があるという話が印象に残った。場所とは何かの解説は難しかったが、例えば「場が決める」という言葉のように、場が議論の方向を決めることもあるという例には納得できた。2024/07/07

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