内容説明
「私はいま、家を去る最後の瞬間にこの文章を書いています。このあとすぐに私は刑務所に再び入れられます」
2023年に獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディの手記と、ナルゲスによる13人の女性受刑者へのインタビューをまとめた衝撃のノンフィクション。
●白い拷問とは?
イランのエヴィーン刑務所は、悪臭と恐怖に満ちた悪名高き場所。そこで繰り返されるのは、看守による自白の強要、鞭打ち、性的虐待、家族への脅迫、そして「白い拷問」だ。照明を操作した独房で昼夜の感覚を奪い、睡眠パターンを妨げ、時に目隠しをし、身体的接触をすべて奪うことで、囚人の身体と精神を蝕む非人道的な拷問である。
●突然の逮捕と奪われた日常
「女性にも権利を」「民主主義と人権を」「好きなことを言い、好きな服を着たい!」自由を求めて思いを表すだけで、服装が不適切というだけで、思想犯・政治犯として逮捕されてしまうイラン。ヒジャブ着用が不適切だと拘束されたのち死亡したマフサ・アミニ氏問題を巡り、国連調査委員会は「違法でありイラン政府に責任がある」と発表している。
本書に登場する女性たちも一方的な容疑をかけられ、拘束されている。幼いわが子を道端に置き去りにするかたちで逮捕・投獄された女性までいる。
著者ナルゲス自身、夫は政治亡命し、10代になった双子の子どもたちも父のもとで暮らし、孤独な闘いを強いられている。13回逮捕され、5回の有罪判決を受け、31回の禁固刑と154回の鞭うち刑を言い渡されても、ナルゲスが闘いをあきらめない理由は、女性の権利と暴力や死刑の廃止を求める信念に他ならない。
●世界選挙年とジェンダーの平等
ある囚人はインタビューでこう明かす。「独裁者が支配する不平等な世界で、人々は支配されるか従うか、どちらかしかないが、女性は普段からさまざまな不平等に傷ついているので、日々の経験を足掛かりに抵抗のレベルを一段あげることができる」と。さらに「男性優位の社会でヒエラルキーからこぼれ落ちた男性は、女性以上に弱い存在になってしまう」と喝破する。
本書は「遠い国のイスラム世界の物語」ではない。今、現実に起こっている人間の権利とジェンダーの平等の問題でもある。専制政治の支配と家父長制度の支配のなかでがんじがらめの女性たちの闘志は、すべての人に勇気を与える。
●推薦の言葉および海外での反響
・安藤優子――全人格を奪う「白い拷問」。その実態をつぶさに告発したナルゲスさんと証言者たち。彼女らが闘っているのは、この地球上の人権を踏みにじられているすべての人々のためだ。
・ニューヨーク・タイムズ絶賛。世界16か国で緊急出版。
目次
●ナルゲス・モハンマディからノーベル委員会への手紙
●ナルゲス・モハンマディの歩みと主張
●ナルゲスとイランの女性の状況について――理解を深めるための序文
●獄中手記――ナルゲス・モハンマディ
●12のインタビューと13人の証言
・ニガラ・アフシャルザデ
「1度や2度でなく、繰り返し私たちの性行為の詳細を説明させられました。尋問はこの過程が特に厳しかったです」
・アテナ・ダエミ
「独房は缶詰のようなものです。中から開けようとは思わないでしょうが、重圧、孤立、期待がその缶をつぶさんばかりに打ち付けるのです」
・サラ・ザクタチ
「一度、歯が折れてしまい、刑務所の医務室で診てもらいたかったが、彼らは全く聞き入れ
ようとしなかった。歯茎が化膿して悪化しても、医務室に連れて行ってくれなかった」
・ナザニン・ザカリ-ラトクリフ
「彼らはとにかく、夫はスパイであり、私は諜報機関で働いていると言わせようと何日も頑張りましたが、私は負けませんでした」
・マフバシュ・シャリアリ
「独房には明かりが足りません。移動の自由が足りません。果物と野菜が足りませんし、食べ物が全くないということさえあるのです」
・ヘンガメ・シャヒディ
「昼も夜も白い電球がずっと点いていて、目が痛くなり、睡眠も阻害される。これもまた拷問だ。下品な言葉を投げつけられ、性的に侮辱されたとき、ひたすら我慢したが、本当に許せなかった」
・レハネ・タバタバイ
「2A棟のトイレの壁に、誰かが両親と住んでいる家の絵が描いてあった。見ていると、自分でもうまく言えない気持ちがこみ上げてきて、トイレに行くときはその絵を見るのを心待ちにしていた」
・シマ・キアニ
「尋問官は物腰こそ柔らかいけれど、言っている内容は手厳しかったわよ。他の家族も逮捕する、お前を別の場所に移送して家族と会えなくさせてやる、とか、つまり脅しね」
・ファティメ・モハンマディ
「シャワーやトイレに行きたいという訴えさえ、嫌がらせの末にやっと聞き入れられるという状態だったので、すべての神経をすり減らしていました」
・セディエー・モラディ
「初めてのときから、拷問ではいつもベッドに縛りつけられた。両手足を引っ張られ、ベッドに固定されるので、ものすごく痛かった。それから電気の流れているケーブルで足の裏を打たれる。体じゅうが痙攣した。叫んだ。死んでしまうと思った」
・ナジラ・ヌリとショコウフェ・ヤドラヒ
「隔離房のドアは金属製で、小さなのぞき窓がついているの。そのうちトイレが詰まって下水があふれ出てきて……房の中に悪臭が充満し、私たちみんな吐きそうだった」
・マルジェ・アミリ
「刑務所では、尋問官は単なる尋問官ではありません。彼らは家父長的な秩序を体現した存在で、彼らの思い通りになることを拒んだ女性から声を奪います」
●おわりに――インタビューを受けた女性たちのその後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
pohcho
ぽてち
空のかなた
練りようかん
kenitirokikuti
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