脳科学で解く心の病 - うつ病・認知症・依存症から芸術と創造性まで

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脳科学で解く心の病 - うつ病・認知症・依存症から芸術と創造性まで

  • ISBN:9784806716648

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内容説明

私たちの脳内には860億個のニューロンがあり、
ニューロン同士が正確に繋がることで、コミュニケーションを取っている。
ニューロンとニューロンの繋がりは、ケガや病気によって変化してしまう。
また、成長の過程で繋がりが正常に発達しなかったり、全く形成されなかったりすることもある。

そうした事態に陥ると、脳機能に混乱が生じて、
自閉スペクトラム症、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、
依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など
精神疾患の原因となる。

こうした脳の混乱がどのように生じるかを研究し、その治療法の可能性を探ることは、
私たちの思考、感情、行動、記憶、創造性がどのようにして脳で生み出されているのか、
その解明にも繋がっていく。

神経科学者たちの研究成果、精神疾患の当事者や家族の声、治療法の歴史を踏まえながら、
ノーベル賞受賞の脳科学の第一人者が心の病と脳を読み解く。

目次

まえがき

第1章 脳障害からわかる人類の本質
脳神経科学と精神医学のパイオニア
ニューロン──脳の構成要素
ニューロンの秘密の言語
精神医学と脳神経科学の隔たり
脳障害に対する現代の研究手法
遺伝学
脳イメージング
モデル動物
精神障害と神経障害の隔たりを埋める

第2章 人類のもつ強力な社会性──自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症と社会脳
社会脳の神経回路網
自閉スペクトラム症の発見
自閉スペクトラム症とともに生きる
自閉スペクトラム症における遺伝子の役割
コピー数の変異
デノボ変異
突然変異の標的となる神経回路
モデル動物からわかる遺伝子と社会的行動の関係
今後の展望

第3章 感情と自己の統一感──うつ病と双極性障害
感情、気分、自己
気分障害と現代精神医学の起源
うつ病
うつ病とストレス
うつ病に関与する神経回路
思考と感情の断絶
うつ病の治療
薬物療法
精神療法──話す治療
薬物療法と精神療法の組み合わせ
脳刺激療法
双極性障害
双極性障害の治療
気分障害と創造性
気分障害の遺伝学
今後の展望

第4章 思考、決断、実行する能力──統合失調症
統合失調症の主な症状
統合失調症の歴史
統合失調症の治療
生物学的治療法
早期介入
素因となりうる解剖学的異常
統合失調症の遺伝学
欠失した遺伝子
過剰なシナプス刈り込みを引き起こす遺伝子
統合失調症における認知症状のモデル
今後の展望

第5章 自己の貯蔵庫である記憶──認知症
記憶の探求
記憶とシナプス接続の強度
加齢と記憶
アルツハイマー病
アルツハイマー病におけるたんぱく質の役割
アルツハイマー病の遺伝学的研究
アルツハイマー病のリスク因子
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症の遺伝学的研究
今後の展望

第6章 生来の創造性──脳障害と芸術
創造性の展望──〈芸術家〉
〈鑑賞者〉
創造的なプロセス
創造性の生物学的基盤
統合失調症の人の芸術
プリンツホルン・コレクションの統合失調症の名匠たち
サイコティック・アートの特徴
サイコティック・アートが現代美術にもたらした影響
他の脳障害と創造性
自閉スペクトラム症と創造性
アルツハイマー病の人の創造性
前頭側頭型認知症の人の創造性
生まれながらに備わっている創造性
今後の展望

第7章 運動──パーキンソン病とハンチントン病
運動系の驚異的な技能
パーキンソン病
ハンチントン病
たんぱく質折りたたみ異常に起因する疾患の共通点
たんぱく質の異常な折りたたみに関与する遺伝子研究
今後の展望

第8章 意識と無意識の感情の相互作用──不安、PTSD、不適切な意思決定
感情の生物学的基盤
感情の解剖学
恐怖
恐怖の古典的条件づけ
不安障害
不安障害の治療
意思決定における感情の役割
倫理的な意思決定
サイコパスの生物学的基盤
今後の展望

第9章 快楽の原理と選択の自由──依存症
快楽の生物学的基盤
依存症の生物学的基盤
依存症の研究
他の依存症
依存症の治療
今後の展望

第10章 脳の性分化と性自認
解剖学的な性
ジェンダーに特異的な行動
ヒトの脳における性的二型
性自認
トランスジェンダーの子どもや思春期の若者
今後の展望

第11章 今も残る脳の大いなる謎──意識
心についてのフロイトの考察
意識についての認知心理学的考察
意識の生物学的基盤
グローバル・ワークスペース
相互関連か因果関係か?
意識の生物学的基盤に関する総合的な展望
意思決定
精神分析と新しい心の生物学
今後の展望

むすびの言葉──一巡してまた初心にかえる

謝辞
訳者あとがき

索引