内容説明
「人材→人財」など、ポジティブな響きを伴いつつ、時に働き手を過酷な競争へと駆り立てる言い換えの言葉。こうした“啓発”の言葉を最前線で活躍する識者は、どのように捉えているのか。そして、何がうさんくさいのか。堤未果、本田由紀、辻田真佐憲、三木那由他、今野晴貴の各氏が斬る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
54
【なぜ、誰に“啓発”への道を歩まされているのか?】「人材→人財」「頑張る→顔晴る」「企業→輝業」など、巷に漂う一見煌びやかな語句や言い回しへの違和感について、言葉の観点から取り組んだ新書。巻末に、主な参考・引用文献一覧。著者初の書籍で、力作。「はじめに」で、<「人財」といった造語には、それを用いる側の働きかけによって、言葉の宛先となる相手の心情を変化させようとする趣があります。こうした語句を、筆者は「啓発ことば」と呼ぶ/あらかじめ設けれられた基準に適うよう、意識を「啓発」する、との特徴が見て取れる>と。⇒2024/07/18
Roko
29
たとえば「人財」という言葉、これは元々は「人材」なのですが「人は財産である」という雰囲気を持つ造語なんです。こういう言葉を使う会社なら、人を大事にしてくれるんだろうなと、ついつい思ってしまいますが、現実はそうとは限りません。志事(しごと)、輝業(きぎょう)のように言い換えることで、さも素晴らしい事のようにイメージさせるという手法に、どれだけ大勢の人が騙されてきたことか。「自由な働き方」とか「個人事業主」という言葉に踊らされてしまった人たちや、「高額バイト」といいう言葉に騙された人たちも大勢いるのです。 2024/06/22
Katsuto Yoshinaga
16
私は世間一般ではホワイト企業と評される上場企業の子会社に勤めていたのだが、親会社を中心に「人財」「リスキリング」「志事(≒パーパス経営)」みたいな言葉やスローガンが大好きで、気持ち悪くてしょうがなかった。報告書等にあえて”人材”と書くと怒られたりした。というわけで、本書に記された「心の痛覚を麻痺させる言葉」とか「個人の心がけを過度に重視する仕事観と、それを労働者の意識に刷り込む言葉遣い」という批評に溜飲が下がった。ただ、本書全般については、非常にとっちらかった印象で、どうにもまとまりがない。惜しい一冊。2024/04/23
あんさん
15
勤め先が数年前から「人財」を使いだして、そんな言葉遊びより、新しい設備に更新したり、使いやすいソフトを入れたりして欲しいと考えていた。「人財」以外にも「顔晴る」「志事」「輝業」「最幸」などの肯定的な意味の漢字を使った「啓発ことば」もあるらしい。なるほど、従業員を使いやすく支配しようとする意図を感じていたのか。反対に使いづらい従業員には「人罪」「人在」と言い換える場合もあるらしい。感じのいい言葉を使って、国や政治家や経営者から、都合の良い型通りの理想を強制されていないか、立ちどまって考えるようにしたい。2025/03/20
Naoko Takemoto
13
書きすぎると身バレしそうなのでそこそこにするが、『人財』という書き替え言葉、企業は労働者を財産として考えるようになったのかとはじめは好意的に感じていたが、現実の酷さから違和を感じ始めて今やイラつきしか感じない。この思いの理由を明確にしたいと思って手に取る。なるほど、労働者の痛みや憤りを救うことを拒絶するためにもっともらしい読み替えをするのか。騙されてはいけない。2024/09/19
-
- 電子書籍
- 父の追憶 ─戦後の父と娘の物語─
-
- 電子書籍
- 実践に役立つ マーケティングの基本知識…