内容説明
藤原氏が外戚の地位を独占して権力を掌握したとされてきた平安時代の摂関政治。近年では、天皇制の危機を回避し、それを擁護・補完するためのものだったと見直されている。幼帝の即位など皇位継承がゆらぐなか、藤原氏はいかなる役割を果たしたのか。摂政・関白が創出された経緯や、摂関政治は本当に外戚政治なのか、その真相を探り明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
16
従来天皇の権力を抑圧するものとして否定的にとらえられがちだった摂政と関白。本書では皇室と藤原氏との関係の推移を年代順に辿ることで、実際には幼帝の即位、傍系からの即位などで皇位・皇統が不安定な状態となることが懸念された際に、外戚や廟堂の首班である藤原氏の氏長者が天皇の後見として摂政・関白となることで、皇位・皇統を安定させる役割を持っていたと結論づける。その他にも関白は摂政から派生したものであること、摂政・関白は原則として終身のものであったことなど、新たな知見が多い。2022/09/07
MUNEKAZ
12
藤原氏の摂政・関白就任について、本書は藤原氏の摂政・関白を求めた天皇側のアプローチを重視する。兄弟間の皇位継承が度々起こった9~10世紀において、両統迭立の状況を解消し、自らの直系に皇位を継がせるためには、廟堂の首班にして氏長者を兼ねる大人物の後ろ盾が必要であった。そして、そうした特別な臣下であった藤原氏の人物に与えられた役割が「摂政」と「関白」であり、摂政・関白という役職が先だってあったのではないとする。安定した皇位継承生むのが上皇の儒教的な権威に変わったとき、摂関政治が意味を失うのも納得である。2024/03/26
紫草
8
私が中学とか高校で習った日本史では、藤原氏って悪者で、それはなぜかって言うと臣下のくせに大きな権力を持って天皇より偉そうにしてたっていうことで、子どもの私は単純に「藤原氏悪いやつだな」って思ってたけど、よく考えたら天皇親政が正しいとは限らないわけで。摂政とか関白とかの形で天皇が有力者の後見を得ることが、天皇にとってもありがたいことだったし、1人の権力者が独裁してたわけではなくて、だいたい公卿たちの総意だったことがよくわかった。あとただ家柄がいいだけじゃなく て役人としてちゃんと優秀。2023/01/25
アメヲトコ
7
2022年8月刊。かつて藤原氏によるいわゆる摂関政治は天皇親政と対比されて否定的に捉えられがちでしたが、本書では摂政・関白はむしろ皇統を安定化させるうえで必要とされたものであることが論じられます。また摂関も最初からきっちり制度化されていたわけではなく、各時代時代の課題への対症療法的に機能が加えられていくあたりは現代の解釈改憲ぽくて興味深いところ。藤原良房が就任した摂政と太政大臣は奈良時代以前の女帝と太上天皇の機能を継承したものという説にはなるほどと。2023/03/10
パパ
2
中世の制度史を摂政や関白の成り立ちから明らかにしようとするもの。最初に摂政と言う官職があり、役割が最初から最後まで変わらないと言う前提を置きがちであるが、本書ではその時代に必要な役割が官職として成立したと言う当然とも思える研究スタンスをとっているのが好感を持てる。 天皇は、譲位してもその権威は一生続く。摂政も当初は、終身続く官職であった。2024/01/21
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