内容説明
イライラしたときには、イライラした物語を。物語によるアンガーマネジメントが誕生!
最近、イライラしませんか? そんなときこそ、イライラした物語を。本書は小説からエッセイ、マンガまで、古今東西の〈イライラ文学〉を集めたアンソロジーです。「イライラしたときには、イライラ文学館を訪れて、イライラ文学にふれて、イライラに共感することで、イライラを相殺してもらいたい」(イライラ文学館館長より)。筒井康隆や内田百聞、チェーホフ等、バラエティ豊かな9つの物語が楽しめる、読むアンガーマネジメント。ぜひお試しあれ。
目次
筒井康隆「心臓に悪い」
志賀直哉「剃刀」
アントン・チェーホフ「ねむい」
ル・クレジオ「ボーモンがはじめてその痛みを経験した日」
谷崎潤一郎「病褥の幻想」
内田百聞「掻痒記」
ソ・ユミ「当面人間――しばらくの間、人間です」
土田よしこ「わけもなく楽しくて...!?の巻」「ムシムシイライラの巻」(『ツル姫じゃ~っ!』より
あとがきと作品解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レモングラス
101
送ったはずの荷物が届かずカスタマーセンターに電話して、さらにイライラさせられた時は筒井康隆の『心臓に悪い』を思い出し笑えるようにしたい。身体で読む文学を集めているアンソロジー。体調により心が変化する。心が身体をあやつっているのではない。身体のほうが心をあやつっているいうのがよくわかるアンソロジー。志賀直哉『剃刀』チェーホフ『ねむい』ル・クレジオ『ボーモンがはじめてその痛みを経験した日』谷崎潤一郎『病褥の幻想』内田百閒「掻痒記』ソ・ユミ『当面人間』ラストは土田よしこさんのマンガ。どれも読み応えがありました。2024/09/13
ケンイチミズバ
89
どうしても他人に伝わらないイライラ。仮に理解されたとしても情状酌量の余地があるだろうか。イライラが人を暴走させる新しいジャンルの編纂。分かってもらえない症状や睡魔、歯痛などに抗い散々苦悩した挙句を文豪がこんなに創作しているなんて。志賀直哉とロシア文学の結末がほぼ同じで面白い。召使の少女は領主の赤ん坊の子守で毎夜、夜泣きされ熟睡したことがない。そんな状況で家事をこなし休む間もなく夜を迎える。腕がいいと評判の顔剃りの親方は熱で床に伏しても弟子たちが不甲斐なく度々起き上がる。終いにはお客からの指名で無理をして。2024/05/02
ネギっ子gen
65
筒井康隆「心臓に悪い」を読んで、大昔読んでいたはずなのに少しも記憶に残っておらずイライラしたけれど、まっさらな感覚で読むことで、圧巻のラストを堪能出来て得した。土田よしこ「つる姫じゃ~っ!」が評判になっていたのは知っていた。でも当時(少女漫画の垣根は高く)読めなくて悶々としていたことを思い出しイライラしたけれど、今はどの漫画も読み放題。年は取るものだ。谷崎潤一郎「病褥の幻想」面白いじゃないか。谷崎再チャレンジを思い立つが、これで積読本消化が遅れるとイライラしたけれど、読みたい本が増えたと思えば、嬉しい。⇒2024/09/03
アナーキー靴下
65
頭木さんの最新アンソロジーを図書館で偶然見かけ手に取る。期待に違わず良かった。特に良かったのはル・クレジオ『ボーモンがはじめてその痛みを経験した日』。筒井康隆『心臓に悪い』もラストが良かった。自分自身かなりイライラしやすい質なこともあり自己分析にも役立った。自分に対してイライラするときは自己像の理想と現実のズレに動揺している状態だと思う。冷静でない状態で原因を追求しようとせずまずはクールダウン。他人に対してのイライラは、相手を下に見てしまってるのかな、と考えた。対等な相手ならモヤモヤになりそうな気がする。2024/06/06
竹園和明
45
最初の筒井康隆でゲラゲラ笑わされました!。本作は、いろんな状況でイライラさせられる人、場面を描いた8編です。その筒井康隆篇は、心臓病を患っているため常に手元に薬がないと超不安な男の悲哀と言うかコメディ。その心臓病は男の脅迫観念が引き起こしているだけなんだけど…。既に呆れ果てている妻、男を離島に異動させる会社、そして引越荷物が届かず何度問合せしてもロクに調べてくれない引越会社など、わかってくれない連中に囲まれその都度怒髪天を衝き死にそうになる男の姿がサイコー!。さすが筒井康隆、ツボを心得ていらっしゃる😄。2024/07/23