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内容説明
近年、1つの組織において研究開発に十分な資金を確保することが難しくなっていることから、外部リソースを活用して効率的に研究開発を進めるオープンイノベーションが広がりを見せている。
大学などに所属する研究者たちからなるアカデミア、すなわち学術界も、オープンイノベーションを推進するための重要なアクターとしての役割を期待されてきている。しかし一方で、次のような問題も指摘されている。産業界をはじめとした外部のステークホルダーとの連携が、研究者にとってプライオリティの高い研究業績をあげることに直接関係がないためインセンティブを保ちにくく、そのため、アカデミアが関与するオープンイノベーションは一過性のものになりがちである、という点である。
本書は上記のような問題の解決の糸口を探るべく、アカデミアと外部ステークホルダーとの「共創」の場として、アカデミアが所有する先端研究施設を外部利用者に広く開放する外部共用活動に注目する。それらの施設に所属する科学者たちに丁寧なエスノグラフィ調査を行い、アカデミアに通底する知の文化(本書では「認識的文化」と呼ぶ)を描き出す。そこからアカデミアと外部ステークホルダーとの共創が阻害される要因を明らかにした上で、オープンイノベーション継続のメカニズムに迫る。
本書は、オープンイノベーションに参画する当事者にはもちろん、ファンディング機関や行政、知財や科学広報などの、科学と社会をつなぐ業務に従事する中間人材にも直接的に役立つ内容となっている。加えて共創のあり方に悩むすべての人々にとっても、立場や目的の異なるアクター同士の連携の重要性、難しさを理解し、その打開に向けての方策を考えるための一助になるであろう。
目次
はじめに
序 章 アカデミアと新しい知の文化としてのオープンイノベーション
第I編 現代知識生産と共創
第1章 共創を阻害する要因
第2章 共創を促進する背景
第3章 共創を推進する方策
第II編 共創の現場としての最先端研究装置
第4章 オープンイノベーションの起点としての研究基盤施設
第5章 調査対象と方法
第6章 NMR
第7章 放射光
第8章 同位体顕微鏡
第9章 小型中性子源
第10章 工作・加工施設
第11章 次世代シーケンサー
第III編 共創へのパスウェイ
第12章 支援活動を主体とする活動
第13章 研究コラボレーションを主体とする活動
第14章 支援を発端とする研究コラボレーション
第15章 小括
終 章 オープンイノベーションとアカデミアのこれから
補 遺 コロナ禍における研究施設の遠隔操作への期待と課題