内容説明
コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。
芥川賞作家・上田岳弘、初めての短篇集。川端康成文学賞受賞作「旅のない」収録!
【収録作品】
「悪口」
恋人と過ごすホテルでのゴールデンウィーク。「じゃあ、悪口の練習しよっか?」。僕は初めて彼女と会った時のことを思い出す。
「つくつく法師」
朝の散歩は4歳の息子との日課だ。午後、僕は古いPCで、昔書いた小説を読み返す。
「ボーイズ」
10歳と6歳のボーイズは、亀甲柄と市松模様のマスクでやって来た。弟の息子たちを預かることになった夫婦の夏。
「旅のない」
「作家さんなんですよね?」。出張先での車中、会話が途切れると取引先の村上さんが聞いてきた……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
toshi
89
2021年の短編集。表題作で川端康成文学賞を受賞しました。上田氏の小説を読むのは「太陽・惑星」以来となります。いずれの短編もコロナ禍が通奏低音として描かれており、ある意味の生々しさが隠れている感じがしました。また、私は緩慢な死のようなものを何故か感じとり、作品の中の退廃感に強く惹かれる自分がいました。文章はとても優しく、細やかなのですが、ある種の暗さを感じ、共感しました。2026/08/09
シキモリ
24
芥川賞受賞作「ニムロッド」が妙に私の琴線に触れた著者の初となる短編集。全編を通してコロナ禍真っ只中の日常が描かれているが、「鬼滅の刃」等の固有名詞が数多く登場するため、些か普遍性に欠ける作品ではある。私的には「悪口」で主人公が語る持論に(良くも悪くも)共感出来る部分はあるし、独身の身としては「ボーイズ」の主人公夫婦の言い分にも一理あると思え、僅かながらの高揚感と居心地の悪さが共存する何とも言い知れぬ読書体験となった。村上春樹氏の「ドライブ・マイ・カー」を想起させる表題作の寂寥的で妖しげな作り上がりが好み。2024/04/20
ひでお
9
コロナ禍の時代を背景に、人の立ち位置と、感情が絶妙に入り混じる短編集。表題作は自分の定位置を失った男が、帰るところが無い人間は旅もないという思考で昔撮った映画を回想しますが、人も記憶も現実とイメージの境目が無くなって、浮遊しているような奇妙な感覚にさせられるお話でした。そんな中、語り手は理論で固めたIT 業界の人間であるのが、フワフワ感との対比で面白く感じました。2025/07/04
火星人碧
6
4短篇を収録。「悪口」「つくつく法師」はなかなか読み進めず。私小説なのだろうか。専門家の評価は高いようなので(受賞歴が多数ある)、つまらないのは読み手のせいでもあるのだろう。「ボーイズ」「旅のない」は理解しやすいのだが、感じるところがなかった。特に表題作は好きなタイプの話なのに、ぷつっと途切れて終わってしまうのが残念だった。2024/07/31
Hironori Oda
4
過去に2作呼んだことのある作者による短編集。筆者の経験談?と感じさせる妙なリアリティと、非現実感が絶妙に混ざり合っていた。まさに純文学という感じの終わり方も心地よい。 次はキューを読んでみたい。2024/11/09




