内容説明
その男、悪人か。
主人を殺し、将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすーー。
悪名高き戦国武将・松永久秀の真実の顔とは。
直木賞作家による、圧巻の歴史巨編。
〈第11回山田風太郎賞受賞作〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
37
人間と書いて”じんかん”と読む。戦国時代の武将・松永久秀の波乱の半生を描き知られざる一面に迫る。どの程度の脚色があるかは詳しくないが、知られている大悪人としての印象から程遠く人情味のある好漢という印象を受けた。主家の乗っ取り、将軍暗殺、そして大仏殿の焼き払いという三悪の背景にこのような事情があったとすれば、これはもう涙なしには読めない物語だ。松永という男は人間の強さや美しさを愛し、また人間の弱さによって翻弄され最期は散っていった。そして信長という理解者によって松永の半生が語られるという巧みな構成は流石。2024/04/21
Y2K☮
29
超傑作。歴史小説と時代小説のあわいに立ち、さらに「じんかん」の愚かさ、尊さ、そして可能性を描く文学要素も併せ持つ。天野忠幸の本を読了していれば、今作の松永久秀像を想像力や思い入れの産物とは感じないはず。一方で著者が現代社会に生きる「じんかん」のひとりとして発さずにいられなかった魂の叫びが、久秀や三好元長、織田信長の生き方及び言葉を通じて語られたとも感じる。誰もが世を変える一厘になれるわけじゃない。だが己は九割九分九厘のひとりだと自覚し、せめて一厘の側に立とうと腹を括ることはできる。北方謙三の解説も沁みた。2024/04/17
tomo
13
☆☆☆☆☆ 4.6 文庫待ちして、数年。発売日に買いましたよ。主君の息子を毒殺、足利将軍を暗殺、東大寺の大仏殿を焼き尽くす、謀反を信長にばれ銘品“平蜘蛛”と一緒に自爆ー梟雄という言葉が可愛らしく感じるほどのダークさ…出自をあまり知られていない久秀像に存分に惹きつけられた。神仏を認めず、口にはしないがこの世を変えられるのは人の力だけ。「人という生き物は変革を拒む、人はそれを神だの仏だのせいにして生きているだけなのです」…確かに。2024/04/23
keisuke
5
文庫化再読。2024/04/28
ワンモアニードユー
3
松永久秀メインの話題作。早乙女貢の「悪霊」を思いだしたが、それとはまったく別な人間の話。まさに神も仏もない世界で、その芯にあった人との縁を冷徹かつ情感たっぷりに生き抜いた人間。世評や大衆の脅威にさらされつつ、三好元長から受けた夢を抱いて生きた生に胸が熱くなる。いろいろしかけられた伏線も見事。胸熱くなる時代小説でした。2024/04/27